過去ログ - 男「だったら俺が悪いのかよ!」
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29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:41:50.91 ID:PjuOVipoo

 待合室の長椅子に座る。増え始めた人々にまぎれて、横目で彼女の様子を見た。
 どうにかして手の中の文庫本に集中しようとしていたが、周囲が騒がしく読書が捗らないらしい。
 だんだん苛々してきたようで、見ているこっちが落ち着かない気持ちにさせられる。

 少しして、彼女は続きを読むことを諦めたらしく、膝の上で文庫本を閉じた。

 彼女――ムラサキは、彼の中学時代に男子からの人気を集めていた女子の一人だった。
 口数が少なく男子とはあまり言葉を交わさなかったが、容姿が端麗であることや、成績が優秀であること、また、ちょっとした仕草が大人びていたことから、あまり表立って話しかけられたりはしなかったが、大勢の注目を集めていた。
 そして彼もまた、ムラサキに憧れているうちの一人だった。

 ちょっと考えてから、彼は彼女に話しかけてみることにした。名前を確認しただけで別れるのでは不自然だと思ったからだ。

「何読んでるの?」

 何の緊張もなく言葉を吐き出せたことに、彼は自分でも驚きが隠せなかった。
 家族以外に話しかけることなんて、もう二年以上なかったのだ。にも関わらずすんなりと声が出た。
 なぜだろう、と考えてみるが、思い当たることはない。



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