71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:26:23.85 ID:mBLofP+Zo
記憶が不意に蘇る。
劣等感、嫉妬、羨望。あいつはいつでもそうだ、と彼は思う。
自分が必死になっても手が届かないものを、いつも簡単に手に入れてしまう。
72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:26:50.41 ID:mBLofP+Zo
これはやっぱり夢なんだろうと彼は思った。こんなにも恐怖を感じることはない。
誰も彼に興味を持つことなく、ただ行き交っていく。そこに確かなものなんて何もないように思えた。
頭痛が強まる。自分はいったい何をこんなに恐れているのだろう。
73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:27:16.57 ID:mBLofP+Zo
ふと、ムラサキのことを考えた。
彼と話したときのムラサキの表情。それは彼にとって、なんとなく、とても据わりが悪いものだ。
でも、あいつなら……あいつなら、彼女はもっと別の表情を見せるのだろうか。
74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:27:44.44 ID:mBLofP+Zo
つづく
>>59
そうなります
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
ex14.vip2ch.com
75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/08/31(水) 22:26:38.20 ID:7eLE/w7SO
>>74
前作から見てるよ
地の文好きなのに書くひと少ないから、
とても期待しています
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/01(木) 21:35:19.90 ID:E3cKPUJ9o
その翌日、彼には何の予定もなかった。
何もやるべきことはなかったし、やりたいこともなかった。
何もする気になれなかった、というのが正確かもしれない。
77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/01(木) 21:37:46.77 ID:E3cKPUJ9o
ひょっとしたらあの衝動は何かの思い違いで、自分の肥大した妄想か何かなのではないだろうか。彼はそんなことも考えた。
部屋を一歩も出ずに昼下がりまで過ごす。今日は本当に気分がいい。
何もせずに一日を過ごすなんて普段ならできないことだ。そう考えると、退屈な一日がなんだか特別なものになった気がした。
78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/01(木) 21:38:29.06 ID:E3cKPUJ9o
では、目的があれば無駄ではないのか。
違う。どのような行為も行動も、結局のところすべて無駄なのだ。
映画スターも芸術家も学者も職人も誰も彼も、どうせいつかは死んでしまうのだ。
79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/01(木) 21:39:38.16 ID:E3cKPUJ9o
◆
待合室に戻る。ふと、自分はここで何をしているのだろうと考えた。
80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/01(木) 21:40:07.30 ID:E3cKPUJ9o
長椅子に腰掛ける。もう何度目だろう? 来ていない日も含めて二週間にもなるだろうか。もうすぐ学生たちも冬休みに入る頃だろう。
待合室のテレビに目を向ける。夕方のニュースが始まっていた。ふと見慣れた地名をテレビの中に見つけた。
駅前から少し歩いた通りの、居酒屋のチェーン店と古臭いスナックなんかが同居した通り。
81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/01(木) 21:40:51.10 ID:E3cKPUJ9o
シートベルト、座席の位置、ミラーの向き、エンジン、ギア。
機械的操作。習慣的繰り返し。
同じ動作を延々と繰り返す。車はどこかに向かうためのものだが、それならどこに向かうというのだろう?
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