320:1です。 ◆CIZA6sfEUc[saga]
2011/10/10(月) 18:38:50.02 ID:GsEPXkjjo
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同情すると同時に、「身勝手だ」と思った。
志乃は唇を噛んで、難しそうな顔をしていた。
怒っているのかもしれないし、気の毒に思っているのかもしれなかった。
交差点の赤信号で停まった。
お義姉さんが前を見据えたままで言う。
「右に行けば依頼人の家。
左に行けばもう一人の女の家……どうする?」
「トモちゃんのお兄さんのとこ!」
志乃が弾かれたように即答した。
「お前……」
「もし……もしもの話だけどね。
おねーさんの助けた人が、呪われて自分を切っちゃったなら……
もしそうなら、次はお兄さんが危ない」
――死ねばいいのにって思っちゃった。
嫌悪感丸だしで呟いた、志乃の横顔を思い出す。
――ただ、関わりたくないだけ。
灰で指を汚した、佐伯さんの顔を思い出す。
「お義姉さん、俺もそう思う。依頼人の家に行きましょう」
信号が青になる。
女吸血鬼の駆る、白の軽は右折した。
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