754:1です。 ◆CIZA6sfEUc[saga]
2012/02/12(日) 23:45:26.35 ID:adFOyhlS0
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「母上、にいちゃんのこときらい?」
「あ……ああ……」
「ぼく、にいちゃんすき。あそんでくれる」
女は子猫を抱えて、うずくまってしまった。
「俺、生きていたいです。周りの人も、不幸にしたくない。
ほんとはこいつの魂もあなたのところに返してやりたいけど……それはできない」
「私の、私の赤ちゃん――」
「俺、こいつと一緒に生きます。幸せにもなる。
ちゃんと死ぬまで生きて、あなたのところに送り届ける」
女は泣き出してしまった。
猫が化けているとわかっていても、泣かれるとなんだか気まずい。
「先に逝って、待っててください」
「待たずとも……お前を殺せば、今片付く話じゃ」
濡れた瞳が、僕をにらみつける。
縦長の瞳孔が開ききっている。
「いいや、あなたは俺を殺さない。あなたがわが子を手に掛けるわけがない」
「この子はどうなる」
「俺の中に戻るでしょう。ほんとは今日、返してやりたかった。
あなたたち親子が離れ離れになったのは、ご先祖様の――俺の血の責任だ。
本当に、ごめんなさい」
僕は、深く長く頭を下げた。
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