954:1です。 ◆CIZA6sfEUc[saga]
2012/07/01(日) 23:06:48.35 ID:jWrTuuAfo
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静かにドアが開かれ――
お義姉さんが黒い渦にのまれたのを見たと認識した瞬間、吸盤のついた無数の足がこっちに向かって伸びてきた。
僕の反射神経も捨てたもんじゃなかったらしい。
(これはタコだ)
粘液にまみれたどす黒いタコ足が、僕らをとらえようと盾を乱打する。
突き出した右手に、衝撃が痛い。
「ぐぅっ!」
口を開けてはならない。左手を顔に押し付ける。
呼吸は浅く速く、苦しくなっていく。
(たのむよ! もってくれよ!)
右腕に静脈がぼこぼこと浮き出てくる。
志乃に逃げろと伝えたいが、声が出せない。
ついに上腕の皮膚が破れて、血が流れ始めた。
(嘘だろおおおお!?)
足の向こうに、なんとかお義姉さんが目視できた。
久しぶりに、あの剣を振るっている。
玄関のタイルに、切り落とされたタコ足がびちびちと跳ねている。
一瞬、直径一メートルはありそうな目玉が、足の中に垣間見えた
お義姉さんは両手で剣を構え、そいつの黒目に深々と突き刺すと――
(助かった……)
膝から崩れそうな僕と志乃の腕を掴んで走り出した。
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