16: ◆3/LiqBy2CQ[sage]
2011/09/15(木) 20:11:47.39 ID:+wTNpPwyo
紬「――もう! こんな夜中に出歩くなんて…危ないじゃない!」
唯「だってー、ムギちゃんが喉が渇いたって言うから……」
紬「時間から考えて、それ家を出た後だと思うけど……全く、本当に……」
とりあえず一階の居間に通すと、唯ちゃんは買ってきたらしい「おいちぃアップル」とかいう見た事もない缶ジュースを差し出してくれた。
ありがたく貰うけれど、それとこれとは話が別。女の子がこんな時間に出歩くなんて……ここはガツンと言わないといけない。
紬「……ありが、とう……」
唯「いいよー。自販機で100円だったし」
紬「そうじゃなくて……私の為にわざわざ来てくれて」
唯「ん……まぁ、休みだったし、別にいいかなー、って」
紬「……ありがと…そしてごめんね、迷惑ばかりかけて……」
私の為に夜中に来てくれた。それ自体はすごく嬉しくて感謝の言葉が先に出るけど、やっぱり後から罪悪感も溢れてきて。
でも、大きな迷惑をかければかけるほど、それを苦にしないでいてくれる唯ちゃんの優しさが身に染みて。
迷惑かけたくないのに、唯ちゃんの優しさに甘えていたくて。感情がごちゃまぜで、わからなくなって。
どうすればいいのかわからないでいると、いつもと変わらない唯ちゃんの能天気な声で現実に引き戻された。
唯「そんなに悩まなくても、お互い様だよ。私も来る途中に知らない人に迷惑かけたし」
紬「……え? どういうこと?」
唯「コンビニで道を聞いたの。一戸建て買ったのは知ってたけど、来たことなかったからね、よく考えたら」
そういえばそうだ。思えば大学寮の時以外、友達を自分の領域に招き入れたことはない。今回も家の場所を教えたわけではないのに、と今更ながらに思い至り、どうやって来たのか聞いてみた。
すると、私が新居から出したハガキから住所だけは割り出し、アテをつけてからコンビニで尋ねた、とのこと。意外としたたかというか、行動的というか……
でも、そこまでして来てくれた唯ちゃんに、私は――
紬「っ……」
唯「……ムギちゃん?」
……ダメだ、この感情は…ダメだ。抱いてはいけない感情だ。
紬「……なんでもない。お話の続き、する?」
唯「……うん。そうだね。りんごジュースだけど、乾杯してからさっきの続きにしよっか」
紬「うん」
……ダメだとわかっていても、認めないことのほうが難しそうだ。
……少なくとも、私の為にここまでしてくれる唯ちゃんが、私の中で『再び』大きな存在になっていっているのは間違いないのだから。
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