過去ログ - まどか「無限の中のひとつの奇跡」
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13:視点:佐倉杏子 ◆oQV5.lSW.w[sage saga]
2011/10/03(月) 23:48:59.96 ID:mLlw9Zym0
「……」
無言で街灯の下に歩み出て来たのは、三つ編みお下げの黒髪に赤いリボン、赤縁眼鏡の少女。
しかし冴えない外見とは裏腹に、その無表情な瞳には、ベテランの風格を宿している。
力量はアタシやマミと同格、若しくはそれ以上だろう。
何れにしても、今は疲れてることも有るし、出来れば無駄な争いは避けたいとこ――なんだが
「返事くらいしたらどうだよ、おい」
友好的に声を掛けてみたのに、返事も何も無いというのが、どうも気に入らねぇ。
こちらが変身を解いているのに、未だに魔法少女の姿のままってとこもだ。
ここがマミのでなくアタシの縄張りだったら、とっくに喧嘩を買っている。
「そんなに警戒しなくても、私達に敵意は無いわよ?」
そんなアタシの苛立ちを知ってか知らずか、純粋な好意のみの笑顔でマミが語り掛ける。
――向こうにはあるとか考えねぇのかよ。縄張り乗っ取り狙いの狂犬かも知れねぇじゃねぇか。
しかしそれが呼び水となったか、そいつがやっと重い口を開く。
「――これは、夢ね」
「夢?」
「幸せで、残酷な夢」
何かを捜し求めるかの様に、星の戻ってきた夜空の彼方を見上げるそいつ。
そのずぶ濡れの髪から顔を伝い地面に落ちる雫は、まるで涙の様に見える。
「カップを受け取った瞬間、全ては泡のように消え去って
私はまた何時ものように、病院のベッドで目覚めるの」
んー、心の矛を納めるか。どうやらこいつはただの、電波な魔法少女だ。
――ちょいとばかし、トラウマ持ちの。
「夢かどうか、確かめてみる?」
マミの魔力が虚空に形を無し、紅茶の満ちたティーカップを作り出す。
「さ、どうぞ」
押し売られる厚意によって差し出されたそれを、そいつは素直に受け取り
湯気と芳香の立ち昇る水面を暫らく眺めていたが
「……消えないのね、やっぱり」
軽く一口飲み下し
「――どうしたの?貴方……」
しかし氷のような仮面は、外すことなく
「……どうもしないわ。ただ……久し振りの紅茶……だったから……」
雨に濡れた石畳に、また幾滴かの雫を落とした。
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