過去ログ - まどか「無限の中のひとつの奇跡」
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23: ◆oQV5.lSW.w[sage saga]
2011/10/04(火) 02:45:08.65 ID:oDJk8X6O0
「――貴方がもう居ないことは、分かっていた筈なのにね」
風が運ぶ、転校生の独り言。
フェンスを背に、どこまでも綺麗に透き通った今日の青空を見つめている。
「でも、今日までは、もしかしたら、って。
だから、涙が止まらなくなってしまったの」
顔の辺りは影になっていて、表情はよく見えない。
けれど、見るまでもない。声が凄く、哀愁を帯びている。
「憶えているわよね。この姿。
ずっと昔の今日、貴方と初めて出会ったときの、何も知らなかった私の格好。
貴方と最後に約束を交わし、その魂を手に掛けたあの日に、捨てた格好」
風が、少し優しくなる。
どこから飛んできたのか、幾つもの白い羽毛が、転校生の周りを舞っている。
「――リボンだけは、貴方のものだけれど」
「貴方が大切にしていたものは全て、私が守るわ」
転校生が眼鏡を外し、ほぼ真上に空を見上げる。
「それが済んで、もう一度貴方に逢える日まで、この格好は封印」
リボンを外し、三つ編みを解く 。
長く綺麗な黒髪が、ふわりと風に舞う。
(脱皮、した……!?)
そんな印象を抱いた、目の前の転校生の変貌。
蛹から現れたのは、神秘的に大人びた、超とか凄いとかのつく美人。
「ふふ――周りの目が違うというのも、在るというか、本音だったりするんだけれどね」
「何を、してるんですか」
いきなり後ろから声を掛けられ、あたしの心臓は機能停止寸前になった。
その声の主が誰か、確かめる間もなく
「――?」
ヤバい。転校生がこちらを振り向いた。
慌てて扉を閉め、声の主を押し退け、脱兎の如く階段を駆け降りる。
わざわざ遠回りをして教室に戻ると、既に授業は始まっていた。
そして転校生は、何時の間にか黒タイツを履いていた。
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