過去ログ - 女騎士「姫の自慰を目撃してしまった」
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45:『Her Knight in Their Nights』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2011/10/21(金) 21:50:55.63 ID:aYv84ioOo
その一言が私を引き止めた。

私は上司の部屋を出た後、そのまま街を出て僻遠の山間で自決をする代わりに、
雨に濡れながら下町の安酒場に行った。

店内は薄暗く閑散としていたが、それでも数人の客が、昼間から安酒を呷っていた。
彼らは、明らかに場違いな服装をした私にも興味を示すことなく、機械的にグラスを口に運んでいた。

びしょ濡れのままカウンターに座って、銘柄のないポートワインをボトルで頼むと、
私の格好を見て身分の高い人間だと判断したのだろう、店主が気を利かせて別の酒を勧めてきた。

今年は二級の赤が手に入りましてね。もちろんボルドーです。きっとあなた様には、
こちらがお似合いですよ。

銘柄がないのが良いんだ。今の私と同じ奴が。

不可解そうな顔のまま首を傾げる店主。

私はもう誰でもないんだ。誰でもない人間には、名前のないポートワインが相応しい。
私がそうと言うと、狂人の臭いを嗅ぎ付けたのか、彼は大人しく注文通りの品を運んできた。

自分の中にぽっかりと空いた虚無の穴を満たそうと、私は粗悪な液体をがぶがぶと喰らった。
しかし、いくら呑んでも全く酔えなかった。
私は訝しんだ。アルコールの過剰摂取が頭の働きを鈍化させるという話は嘘だったのか。

私は無茶苦茶な勢いで酒を喉に流しこんだが、その度に姫の記憶が目の前にちらついた。

その画を赤く塗り潰すため、赤い酒をさらに体内にぶちまけていると、突然、時計の針が壊れた。
記憶が時間の矢を無視して、過去と現在を振り子のように往来し始めたのだ。
それは、遠い過去へ遡ったかと思うと、今度は急に最近の映像を再生し、そして再び昔へ巻き戻った。
私はそれらを叩き割るために、さらにグラスに液体注ぎ、それを呷り続けた。


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