過去ログ - 女騎士「姫の自慰を目撃してしまった」
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55:『Her Knight in Their Nights』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2011/10/21(金) 22:22:06.15 ID:aYv84ioOo
街を出てから、私は当てもなく、各地を幽霊のように彷徨い始めた。
順当にいけば、私はすでに己を野犬と虫の餌にしていた筈だった。

その結末を変えたのは、小さな容器に入った、使いかけの口紅だった。
関係を持ってから一ヶ月の記念として、私が姫に贈った髪飾り、その返礼として受け取った物。
とてつもなく高価だと知り、慌てて返そうと思うも、姫の気持ちを返上する訳にはいかないと
考え直し、大切に手元に置いておいた宝物。

城を出た最初の夜、焚き火の弱い明りが、荷物に紛れたそれを闇から浮かび上がらせた。
私は容器を取り出すと、漆黒の音しか聞こえない山中で、産まれて初めて、口に紅をさした。

その香りが鼻腔をくすぐった瞬間、姫との記憶が頭の中で弾けた。

姫の向日葵のような笑顔、恥じらった面差し、かわいらしい表情、
ぎゅっと握り替えしてくる掌と指の感触、さらさらと流れる美しい長髪の手触り、
抱きしめた時の肌の温度、涙の塩辛さ、口内の甘さ、膣分泌液のわずかな酸味、
蕩けた嬌声、はしゃいだ声色、悲しみを伝える囁き
――そして、私の名を呼ぶ声。

ありとあらゆる思い出が、怒濤の如く私の身体を流れてゆくと、
最後に、それは涙になって体外に排出されていった。

姫の中の私は死んだが、私の中の姫はまだ生きている。

姫が生きているのならば、私はまだ従者でいられるのかもしれない。
そして、私の中の姫を生かしているのは、この口紅だ。
私は欠かさず、紅をさそう。そして、この口紅がなくなった時、私は死のう。


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