141:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/23(日) 18:18:44.69 ID:VvTHD4vM0
「そんなことはない。リハビリして、ちゃんと過程を踏めば段々動くようになってくるさ。今はただ、麻痺しているだけだよ」
圭介とは真逆のことを言い、大河内は優しく、汀のことを抱きしめた。
汀がびっくりしたような表情をし、しかし冷えた体に感じる人の体の温かさに、安心したように息をつき、大河内に体を預ける。
「泣かないで。一緒に治していこう。一緒に」
いつの間にか汀は泣いていた。
涙が、次々と目から流れ落ちていく。
「あれ……? あれ……?」
呟いて、汀は右手で目を拭った。
「どうして私……泣いてるんだろう……」
「人の心は難しいものだ。君がどうして泣いているのか、分からないけれど……」
大河内は汀から体を離して、また頭を撫でながら言った。
「これからは、私がついている」
「……うん」
涙を流しながら、汀は頷いた。
いつの間にか、彼女の病室の表札は、「高畑汀」となっていた。
振り仮名で、「なぎさ」ではなく「みぎわ」と書いてある。
その意味を、彼女はまだ知らない。
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