157:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/29(土) 01:14:52.24 ID:veqilnkN0
   「殺し合いをしろってことか」 
    
   「違う。汀ちゃんに、ナンバーXを説得して欲しいだけだ」 
    
   「説得?」 
    
   怪訝そうな顔をした圭介に、大河内は頷いた。 
    
   「赤十字は違うだろうが、私個人としては、ナンバーXを断罪する気も、咎めるつもりもない。ただ、これ以上罪を重ねて欲しくないんだ」 
    
   「随分と偽善的な台詞だな」 
    
   「何とでも言え。この状況を、それで収拾できるなら、俺は偽善者でもいい」 
    
   「だからこそのこの患者か」 
    
   最初に渡された資料を手に取り、めくりながら圭介が言う。 
    
   「合点がいったよ」 
    
   「請けてくれるか」 
    
   「充当手当ての五倍もらう」 
    
   圭介は感情の読めない瞳を彼に向けた。 
    
   「それでいいなら請けよう」 
    
   「……分かった。明日、ダイブを決行したい。赤十字のマインドスイーパーも、サポートにつける」 
    
   「邪魔になるだけだと思うが、やりたいなら好きにすればいい」 
    
   圭介はそう言って立ち上がり、汀の隣に移動した。 
   そして眠っている小白を無造作に掴み、ケージに放り込むと、リードを外して、それもケージの中に突っ込んだ。 
   彼はケージを腕にかけると、汀を慎重に抱き上げた。 
   彼女は、すぅすぅとまだ寝息を立てていて、起きる気配がない。 
    
   「待て。もう少し詳しく説明と打ち合わせをしたい」 
    
   「これ以上、汀の体を冷やすわけにはいかない。追加の情報があるなら、すぐに病院に戻って、うちにFAXするんだな」 
    
   圭介は頭を下げるオーナーに会釈してから、一言付け加えた。 
    
   「お前の情報は、信用しないけどな」 
    
   背中を向けて歩いていく彼を見て、大河内が深いため息をつく。 
   コーヒーをすすった彼に、店員が別のコーヒーを持ってくる。 
   それを制止して、大河内も立ち上がった。 
178Res/185.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。