66:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:29:51.72 ID:CGXDMCHp0
汀は、したたかにコンクリートに打ち付けた頭から血を流しながら、ぼんやりと目を開いた。
そして、はねられた後だというのに、のろのろと起き上がる。
腕と足が異様な方向に曲がっており、満身創痍にも程があると言った具合だった。
トラックの運転席には、誰もいない。
今は停まっているそれを見て、彼女はゆっくりと振り返った。
ケタケタと、写真で見た壮年男性が笑っていた。
十メートルほど離れた場所に直立不動で立って、目だけは笑っていない顔で、笑っている。
ポツリ。
また、血が降ってきた。
汀は、荒く息をついて、彼に向かって口を開いた。
「……あなたに、輸血が出来なかった」
か細い声だった。
「事故に遭ったあなたは、宗教上の理由で輸血をしてもらえなかった」
ケタケタと男が笑う。
「だから、あなたは狂ってしまった」
血の雨が強くなった。
「麻痺が残った体で、あなたは段々と夢の世界に逃避するようになっていった」
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