過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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◆ES7MYZVXRs
[saga]
2013/04/19(金) 23:00:41.40 ID:nvGs0I5wo
食蜂はそんな上条に苦笑すると、温泉卵を片手に空を見上げる。
つられるように上条も視線を上に向けてみると、そこにはオレンジ色から次第に茜色に変わっている空が遠くまで広がっており、薄い雲がいくつか浮かんでいる。
明日は雪が降るかもしれないという予報が出ていたはずだが、そんな気配を感じないほど綺麗な夕焼けだ。
そのまま上条が小さく白い息をつくと、それは真っ直ぐ空へ昇っていく。
二月の夕方ということもあって、着込んでいても寒いことは寒い。
思い返してみれば、最近は色々な事がありすぎて、こうしてゆっくり休息をとる事も少なかったような気がする。
インデックスが戻ってきてからは色々と慌ただしかったし、その前は逆に何もやる気が起きなかった。
こうして一度息を抜くと、様々な事が頭をよぎっていく。その大半はインデックスのことだ。
彼女は明々後日にはイギリスへ帰ってしまう。
その時、自分はきちんと別れられるのだろうか。笑顔で「またな」と言えるのだろうか。
上条は自信が持てない。
もう二度と会えないというわけではないはずだ。あくまで今の微妙な世界の状況を考慮して、一時的に科学と魔術を明確に区切る。
それぞれのサイドの有力者による話し合いで、きっとまた元の状態に戻れる、そう信じている。
今まで科学と魔術の間では色々あったが、今では互いが互いを理解しようと思っている。
だが、それでもこれからもインデックスと一緒に暮らす事はできないかもしれない。
彼女は自分の力を役立たせたいと言っていた。それは本心なのだろう。
それならば、科学と魔術云々という話ではなく、やはりイギリスの方に居たほうが良いということになる。
彼女の知識は科学方面ではなく魔術方面で存分に発揮されるからだ。
だから、もう会えないという事はなくても、生活は別々になるという可能性があるというわけだ。
こういった事は、何も珍しいことではないのだろう。
小萌先生も言っていたが、人生において別れというのはいくつもあるものだ。
確かに、思い返してみればインデックスとの生活は楽しかった。
上条が料理を作っている時に待ちきれないように度々キッチンに姿を現してつまみ食いをしたり、出された食事は本当に幸せそうに食べてくれたり。
朝は早起きして祈りを捧げてシスターっぽい事をしているかと思えば、昼にはゴロゴロとスナック菓子を食べながらアニメを観たり。
いつの間にか上条のクラスにも打ち解けていて、大覇星祭や一端覧祭のあとの打ち上げにもちゃっかり参加していたりして。
一つ一つは何でもない、些細な事なのかもしれないが。
それでも、上条にとってはその全てがもう二度と失いたくない、大切な思い出だ。
今までの思い出があれば例え離れていても平気だというのはフィクションの世界での綺麗事に過ぎないと思う。
離れていれば当然寂しい。それはインデックスが一度イギリスへ行ってしまった時に嫌というほど知った。
居場所が変われば、生活も変わる。上条は学園都市で、インデックスはイギリスでそれぞれの道を歩んでいく。
たまにはその道が交差することもあるかもしれない。今の問題が解決すれば、飛行機に乗れば学園都市とイギリスの間を行き来する事だってできる。
会いに行けば彼女は笑顔で迎えてくれるだろう。様々な所を案内してくれて、幸せな時間を過ごせるのだろう。
お互いに自分の近況を話しつつ、昔の思い出話なんかにも花を咲かせる。そして最後に「楽しかった」「また遊ぼう」と言って二人は満足気に別れる。
ただ、それだけなのだ。二人にとってそれは日常とは少し離れた事であり、それは二人の世界が明確に切り離されてしまったという事を実感させる。
彼女にとっての日常には上条は居なくなる。楽しいことも悲しいことも、その大半をイギリス清教の仲間達と分かち合う。
そして上条の知らない友情、あるいは愛情を育んでいくのだろう。
それを想像するだけで感じる胸の痛み。それも含めて別れというものなんだろう。
頭では理解できるが、納得はできない。
今までだって似たような事はあった。
例えば一人の少女が自分のクローンのために自らを犠牲にしようとしている場面を目撃した時。
例えば何の罪もない不死の存在が、周りの好き勝手な都合に振り回されてその命を手放そうとしていた時。
いつだって上条は納得できずに自分の思うように動いた。それに続いてくれる者達も居てくれた。
それは大人になれない子供だからこそできた行動なのだろう。
自分の考えが全て正しいとは思わない。それでも自分自身くらいはそれが最善だと信じたい。
今回はそんな風に動くことができなかった。
何よりもインデックスの幸福を願っているからこそ、彼女を止めることなどできない。
納得はできないが、動くことができない。
「……はぁ」
「まーたインデックスさんの事考えてるんですかぁ?」
「プライバシーも何もねえなその能力」
「能力は使ってませんって。顔見れば分かります」
「あー、そういや俺ってすぐ顔に出るとか言われたな」
上条は視線を空に固定したままで小さく笑う。
こうして話している間にも空はオレンジ色から茜色に変わりつつある。
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