過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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751: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2013/07/16(火) 17:44:37.62 ID:wF64hV+jo

美琴は、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。

「私、ちょっと行ってくるわ」

「……くくっ、景気付けに一杯飲んでく?」

「はは、お酒の力なんていらないわよ」

「ふん、言うじゃないの。まぁ、もしもの時のために酒は残しておいてあげるわ」

「不吉なこと言ってんじゃないわよ、まったく」

美琴は若干呆れて溜息をついた。だが、これが彼女なりの送り方というのは分かる。

麦野はやたら満足気にダランと片腕を上げて横に振る。
男達はどうしたのかとぼんやりとこちらを見るには見ているのだが、頭のアルコールのせいでそれ以上考えることはできないらしい。

美琴はしっかりとドアノブを握りしめ、外へ踏み出した。
まるで、RPGのボスの元へと向かう主人公のように。



***



視線は真っ直ぐ前へ。足は一定の速度でしっかり踏みしめて。
一歩一歩進む度に、美琴の中の意志はどんどん強くなっていくような気さえした。

頭の中は上条のことで一杯だ。おそらく新学期の頃の自分はここまで誰かに恋する事になるとは夢にも思わなかっただろう。
もちろん、興味がなかったわけではない。美琴も中学生らしく、恋に恋する時もあった。例えば仲の良いカップルを見かけた時や、恋愛物の映画を観た時などだ。
それでも、美琴にとってそれはどこか現実味のないもので、本当に自分はこの先そういったものに出会えるのかという疑問もあった。

いつからだったろうか、その姿を常に探し始めたのは。
いつからだったろうか、会う度に心が安心してどこか舞い上がったりするようになったのは。

それは時には痛みも伴うものだったが、そんなものは気にならないくらい遥かに多くの幸せを実感することができた。
毎日の景色も明るく見え、遊びも、はたまた授業でさえいつもより楽しく感じることができた。

寝る前には自分の理想を頭に思い描き、それだけで自然と頬が緩み胸が満たされて。
朝起きた時には今日は会えるかな、などと希望に胸を膨らませ。
放課後に彼を見つけることができた時には、決して表には出さなくても、それはそれは飛び上がらんばかりに喜んだ。

上条からは大切なものをいくつももらった。
それこそ、どうやって返せばいいのか分からない程のものを、たくさん。

おそらく彼は返す必要なんかないと言うのだろう。
自分の好きにやったのだから、それに対して見返りを求めているわけじゃない、と。

当然、そんな事は受け入れられない。美琴自身の気が済まない。

だから、美琴は上条を助けようと思った。
いつ、どんな時でも。彼が助けを求めてくれた時はもちろん、そうでなくても苦しそうな時はいつでも。

上条は常に誰かのために動き、ただ自分がやりたいようにやっているだけだと言って誰彼構わず救い上げてしまう。
だから、美琴も自分のやりたいようにした。文句は言わせなかった。逆に感謝された時は、頭が真っ白になる程嬉しかった。
どんなに危険な状況であっても、最後に上条が満足気に笑ってくれればそれだけで美琴は満足だった。

美琴は、数え切れないほどの幸せをくれた上条が不幸になるなんて許せなかった。
だが、それで自分の幸せを疎かにしても、上条はいい気がしないというのは分かっていた。
だから、自分も上条も幸せになる。そんな未来を思い描いて進んできた。

今も何も変わっていない。
これから少し後、美琴はその思い描いた未来を試すことになる。
もしかしたらその未来は現実へと近付くかもしれないし、崩れてしまうかもしれない。

でも、例えそれが崩れたとしても。思い描いていたものと違っていても。

美琴は決して後悔などはしない。
それはきっと上条にとって一番の幸せなのだろうし、それならば美琴にとっても幸せだ。

それでも、きっと彼は美琴の事を気にかけるのだろう。そして彼は自問自答する。本当にこれで良かったのかと。
そんな時は胸を張って堂々と、相手が驚くくらいの勢いで言ってやる事にする。


私は幸せだ、と。



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