過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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804: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2013/09/19(木) 05:09:45.27 ID:EJeQ9ZV8o

照明は明るいものではなく、全体的にぼんやりとしたオレンジ色の光が部屋に満ちていた。

「いらっしゃい。超歓迎とまではいきませんが、まぁごゆっくり」

そこでソファーに座っていた茶髪ボブの少女、絹旗最愛の存在に気が付く。
小さくてすぐに気付かなかったなんて言えば悲惨な事になるのは分かっているので、当然ながらそんな事は言わない。

「急に悪いな。浜面は?」

「ん」

絹旗は首だけ小さく動かして奥の部屋を指し示す。
ざっと見る限り他の部屋に繋がっているらしき扉もいくつかあり、それなりの規模の空間である事が予想できる。

といっても今は探検よりも自分の用事を優先すべきだ。
上条は真っ直ぐ指し示された扉へ近づき、コンコンとノックする。

「おーい上条だ。浜面いるか?」

「別にそのまま入っちゃっていいと思いますよ」

「へっ? いやでも……」

「超大丈夫ですって。それなりに急ぎの用事なんでしょう?」

「ん、まぁそうだけどよ……」

絹旗の言葉に押されるように、上条はドアノブを握って回す。鍵はかかっていないらしく、扉は簡単に開いた。

その奥では浜面仕上が何かの作業に集中しているようだった。
ガキッガキッという金属音が聞こえているが、それだけで何をしているのか理解できるほどの洞察力は持ち合わせていない。
いや、上条も極限状態の中ではたまに優れた洞察力や機転を発揮する事もあるのだが、それを常時発動できる程完成されていないというだけか。

何はともあれ、彼の背中だけを見ていても仕方がないというのは事実だ。

「浜面?」

「…………」

「おーい浜面。聞こえてんのかー?」

「…………お?」

ここに来てようやくこちらに気がついたらしく、浜面が振り返る。
そして。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」


ガタガタッと何かを隠した。


「……何してんだ?」

「あ、いや、何でも…………つかいつの間に来てたんだお前!?」

「ついさっきだ。気付いてなかったのか?」

「あぁ…………って絹旗の奴か…………」

浜面はなおもガサゴソと何かを隠そうとしており、上条としてはかなり気になる。
首を少し伸ばして奥を見てみようとしたが、浜面はそれに気がついて、

「上条、ここにはきっとあんたが興味を持つようなものは何もない」

「いやそんな必死に何かを隠そうとしながら言われてもな」

「……知りたいか?」

「知りたいかと言われれば知りたい」

「じゃあ知らなくていい。あんたはできれば知りたい、俺は絶対知られたくない。それならこのまま何事もなかったかのように部屋を出ても何も問題ないはずだ」

「分かった分かった、そんなに知られたくないってんなら無理に知ろうとは思わねえよ」

元々、ここへ来た理由は浜面の秘密を無理矢理暴くためではない。
本人がこれだけ隠したがっている事を、意地でも明らかにしてみせようなどといった探偵精神旺盛なわけでもない。
世の中には謎のままにしておいた方がいいと、どこかの名探偵も言っていた気がするし。


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