過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
1- 20
986: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2014/05/01(木) 02:50:47.62 ID:wiguRyO8o



***



上条は、遠巻きに子供達の輪を見つめていた。
自分は入っていけない、とても楽しそうなその様子を、ただただ眺めているしかなかった。

少しすると、大人達も歩み寄ってくる。
だが、当然ながら上条の元ではない。子供達の輪の方だ。
加えて、こちらに嫌な視線を送ってくる。ひそひそと、何かを話している。

そんな時、ふいに自分の両手が暖かいものに包まれた。
顔を上げると、そこにはいつもの両親の微笑みがあった。
それを見て、自然と上条の顔もほころぶ。

気付けば、心のもやもやは綺麗になくなっていた。


学園都市。
両親から離れての生活は、初めこそは戸惑ったものだが、次第に馴染んできていた。

この場所に来るまでに、色々な事があった。それこそ、不幸の一言では済ませられないようなものも。
もちろん上条自身も辛かった。どうしてこんな目に合わなければいけないのかと、大して信じてもいない神様を呪ったりもした。
そしてそれ以上に、ふとした時に見てしまう両親の辛そうな表情を見るのが、辛かった。

学園都市は外とは変わった環境が備わっている。
それは設備だけではなく、人々の空気の話でもある。それも単に子供が多いという事ではない。

みんな、上条を受け入れてくれた。
掌から炎やら電撃やらを放つ事も珍しくないこの場所では、運が悪いだけというのは笑いを誘う事はあっても恐怖を誘う事はなかった。
まぁ、同時に右手の妙な力が判明するという事もあったのだが。


高校生になって初めての夏休み初日。暑い、暑い朝だった。
前日に超電磁砲の少女と一悶着あり、クーラーが壊れていた寮の部屋のベランダ。

そこで、彼女と出会った。

その後は本当に大変な事の連続だった。
炎の魔術師に勝って、刀の魔術師に負けて。
彼女を取り巻く、冗談のように絶望しかない状況を知って。

だからこそ、彼女の事を助けたかった。
偽善使い(フォックスワード)ではなく、本当の、本物の。

ヒーローに、なりたいと思った。

ひらひらと、優しく舞い降りてくる白い羽によって上条は死んでしまう。それは何となく分かった。
それでも、不思議と穏やかな気持ちなのは、心の底から守りたいと思った彼女がすぐそこにいるからか。

いや、たぶんそれだけではない。
この心に宿る気持ちを、上条は知ることができた。
それは単純だが、とても大切なものだ。

たとえ、ここで自分が死んでしまったとしても。


きっと、それは消えない。どこかに残ってくれる。


そう――――思えた。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1634.09 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice