過去ログ - 魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
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◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2011/12/21(水) 00:05:25.93 ID:nfQOajV2o
程なく、降り注ぐ瓦礫で魔王の間は埋まっていった。
砕けた左腕にもはや痛覚は感じない。
息を深く吸うと、折れた肋骨の先端が肺を引っかき、痛みとともに吐血を催す。
左目は、開くことすらできない。
残された右の目も、上手く焦点を結んでくれない。
仲間が出て行った事を悟った勇者は、その場に片膝をついた。
右手に握っていた剣は、半ばから折れてしまっている。
最後の役目を果たした剣からは段々と輝きが失せていき、
戦場のどこにでも転がる、『折れた剣』へと変わってしまった。
勇者「………これで、いいんだ」
折れた剣を鞘に戻し、一人ごちる。
言葉にしてしまわないと、最後の最後で生への欲求がもたげてしまう。
認めたくはない。
だが、隠せない。
―――死にたく、ない。
―――あんまりだ。
―――俺は世界を救ったのに、世界は俺を救ってくれないのか?
―――こんなバカな話を、世界は受け入れるのか。
声無き慟哭が、崩壊していく魔王城に響き渡った。
仲間がいなくなった孤独な戦場跡で、勇者は『人間』としての、当たり前の感情を取り戻した。
醜く、弱く、打算さえ備えていた、『人間』の心が露わになる。
彼は、ようやく。
『勇者』と言う名の呪いから、解放されたのだ。
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