507:以下、あけまして[saga]
2012/01/03(火) 01:42:15.76 ID:eLdT6SB4o
それなのに。
これは当時本当に不思議だったけど、妹ちゃんは先輩と付き合いだしてからもあたしと一緒に過ごす時間を減らそうとしなかった。先輩は女の子と付き合いだすと、その子はべったりと学校の内外
で先輩にくっついている。そんな光景は日常茶飯時なほどによく見かけたものだった。でも、妹ちゃんを落とした先輩は学校で一人でいるか男の友人達と一緒にいるようになった。要は妹ちゃんが
先輩とべったりと一緒にいるようなことをしなかったのだ。それで、あたしは相変わらず妹ちゃんと一緒に過ごすことができた。いや、むしろ妹ちゃんがあたしに罪悪感を感じている分、妹ちゃん
は以前よりあたしに優しく接してくれるようになったのだ。それはあたしにとって奇妙な時間だった。妹ちゃんに彼氏ができるという最悪の結果になったにも関わらず、以前より妹ちゃんと親密に
なるという。
委員長ちゃんは思っていたよりショックを受けていないようだった。ある日、他に人がいない時に語ってくれた話によると、こんなことで一々気にしてたら体が持たないよとのこと。ただ、その後
に独り言みたいにボソッと付け加えた言葉はあたしの胸の中にしばらく留まった。
「妹ちゃんもかわいそうだよね。妹友ちゃんと一緒で」
その頃、妹ちゃんの話には付き合い出したばかりの先輩の話題は滅多になく(あたしに気を遣ったのかもしれないけど)、むしろ妹ちゃんは以前より頻繁に家族の話をするようになった。
専業主婦でいつも家に居る口うるさいママを持つあたしと異なり、妹ちゃんの両親は共働きだった。両親ともに多忙な管理職ということもありなかなか家に帰ってこないのだとか。妹ちゃんは一人
で家事をしたりして両親不在の家を支えているのだ。妹ちゃんにはお兄さんがいる。今年大学に入ったばかりだけど、遊び歩いていたり帰ってきても家事の手伝いもせずに部屋でゲームとかしてい
るらしい。それでも妹ちゃんはいつだってそのお兄さんの話を繰り返してする。時に顔をひそめながら、時に笑いながら。
その頃からあたしの中に育って来た疑念。
妹ちゃんはあたしにだけではなく、グループの女の子たちにもお兄さんの話ばかりしていたらしい。先輩とのエピソードを期待していた子たちがその期待を裏切られて、密かに妹ちゃんのことをブ
ラコンと言い出し始めた。もちろん、妹ちゃん本人の前で言う子はいなかったけど。あたしも直接妹ちゃんに聞いたことがあった。
「ねえ妹ちゃん」
「うん」
「妹ちゃんってさ、彼氏の話とかあまりしないよね」
「そうかな。まあ、あまり話すようなこともないし」
「・・・・・・普通は彼氏のことって話したいんじゃない? もしかしてあたしに遠慮してる?」
「別にそんなことはないよ」
「・・・・・・妹ちゃんってさ。よくお兄さんの話をするけど、お兄さんのこと好きなの?」
「好きって? どういう意味で」
妹ちゃんは微塵も動揺しないで平静に聞き返した。
「だってさ。彼氏の話よりお兄さんの話の方が多いなんて。いつもお兄さんの悪口ばっか話してるけど・・・・・・実は妹ちゃんってブラコンなの?」
「そうかもね」
「え?」
「あたし、少しブラコンかも」
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