923:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/23(月) 22:50:40.27 ID:cC0z6VNso
帰宅したあたしは自分の部屋にカバンを置いただけで制服を着替えることもせず、お兄ちゃんの部屋に向かった。口実ならあった。お母さんたちが帰れないってお兄ちゃんに伝えなければいけない
し。あたしはうきうきしながらお兄ちゃんの部屋の前に立った。
「お兄ちゃん?」
あたしはお兄ちゃんに声をかけながらドアを開けた。玄関にお兄ちゃんの靴があったのでお兄ちゃんが帰ってきていることはわかっていた。
「今、帰った」
あたしはお兄ちゃんに言った。考えれば帰ったことなど見ればわかるのに我ながら無駄な報告だった。
「え? おまえ何で」
どういうわけかお兄ちゃんは驚いたようだった。
「何でって?」
「いや。おまえ今日遅いと思ってたから、ちょっとびっくりした」
あたしが今日遅いなんて何でそんなことを考えたのだろう。あたしは必死で少しでも早く帰ろうとしていたのに。
「そうなの? 普通に登校日だっただけだし」
「そうか」
そんなことよりお兄ちゃんに報告しなければいけないことがあった。
「お母さんからメール来た」
「何だって?」
あたしはメールを読み上げた。
「諸君の両親の来週末までの帰還は絶望的につき、各自それぞれ工夫し自給自足で生き延びられるように努力されたし」
「はあ?」
「そういうメールなんだもん」
あたしはお兄ちゃんに微笑みかけた。
「・・・・・・つまり今度の日曜日まで一週間家に帰らないから子どもたちだけで生活しろと。そういうことか?」
お兄ちゃんがいった。
「そうみたい」
あたしは再び微笑んだけど、それはどういうわけかお兄ちゃんを戸惑わせているようだった。
「しかし、一週間コンビニ弁当かよ」
「別にコンビニじゃなくてもいいじゃん」
あたしは意気込んで言った。
「まあ、カップ麺好きだし」
コンビニの次がカップ麺ってどういう発想なんだろうこの人は。お母さんがいない以上あたしがお兄ちゃんの健康管理をする必要がありそうだった。
そんなことをあたしは再びうきうきしながら考えていた。
「カップ麺一週間とかだめだよ。体壊しちゃうよ?」
「コンビニ弁当好きじゃねえんだよな」
物分りの悪い人だな。
「電話の下の引き出しにお金入ってるからそれで食事してって」
「金の問題じゃなくてさ」
「ファミレスも嫌いなんだっけ?」
あたしは平静を装って、でも心の中ではデートに誘っているみたいにドキドキしながらやっとこの言葉を口にした。
「一人でファミレスで夕食食うくらいなら、自分の部屋でカップ麺食いながらゲームしてた方がいいし」
「一人じゃないじゃん」
「へ?」
「あたしも一緒だし」
この時あたしは少し赤くなっていたかもしれない。
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