161: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2011/12/18(日) 19:33:10.88 ID:+zrhUEmho
「辛うじて、手の形は治したんだけど、肝心の神経のほうがズタズタに
壊れてしまっていて、今の医学ではとても……」
「どうしてそんな話を俺に?」
「いや、なんだか仲良さそうにしていたから」
「最近は、個人情報の保護とかうるさいんじゃないっすか?」
「大丈夫だよ、キミは詢子さんの紹介なんだろう?」
(どんだけ信頼されているんだ詢子サンは)
「それと、僕自身の勝手な慰めを誰かに聞いてほしかったんだ」
「慰め?」
「上条くんが救急で運ばれてきた時、彼の手術を担当したのが僕なんだ。
僕がもう少し上手くやっていれば、彼も、あるいは」
「……まあ、酷な言い方になりますけど」
「?」
「俺は、ただの清掃アルバイトっす」
「……そうだね」
「じゃあ、俺はこれで」
「お疲れさま」
播磨はそう言うと、医師に対して一礼して清掃員用の休憩室へと戻る。
そして掃除用具を片付けると、元の服に着替えて帰ることにした。
帰り途、彼は月明かりの中で自分の手を眺めながら、
(もし、俺のこの手が使えなくなったとしたら)
そんなことを考えた。
(想像もできねェな)
そう思い、播磨は考えるのを止めた。
つづく
702Res/519.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。