329:年末スペシャル ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2011/12/25(日) 20:40:52.69 ID:GEEMDRZko
第四話 天国と地獄
月末。
それは播磨にとって憂鬱な時期でもある。
学費以外の生活費諸々をアルバイトで賄っている彼は、急な出費などで月末にお金が無くなることが
多い。
そして今月も、生活費が底をついた。
同居人も金銭面ではあまり頼りにならないため、これからアルバイト代が振り込まれる三日間、
彼は昼飯無しで過ごさなければならない。
昼休みになると、播磨は教室を抜け出して校舎の隅にある水飲み場で水を飲んで空腹を紛らわせた。
「んぐ、んぐ、んぐ……。ぷはあっ」
喉も乾いていないのに水を飲むという行為ほどキツイものはない。
それにいくら腹にいれたところで、それは所詮水である。汗か排せつ物になって外に出て行ってしまう。
「ああ、やっぱここにいたか播磨」
聞き覚えのある声が響く。
「田井中か」
同じクラスの田井中律である。
「お前、また金が無くなったのか? 月末になるとよくあるよな」
「うるせえな」
「ほれ、貸してやるから購買で何か買ってこいよ」
そう言うと、律は右手に百円玉を二枚ほどつまんで播磨に差し出す。
実にけち臭い。
「施しは受けねェ」
「施しじゃねえよ、貸しだっつうの」
「だったらなおさらいらねェ」
「腹減ったら授業に集中できねえぞ」
「もともと聞いてねェから問題ねェ」
播磨はそう言って、教室に戻る。
「ったく、強情なやつだな」
別れ際、律は吐き捨てるように言った。
*
702Res/519.76 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。