4: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2011/12/11(日) 19:23:37.58 ID:3NsOQz0Wo
「……」
彼はそんな猫の目を、見つめ続けた。
次の瞬間、黒い猫は脚を引きずるようにしてピョコピョコと歩いてこちらに向かってきた。
確かに脚をかばっているようだ。
彼は小さな黒猫を抱き上げる。両手から猫の生命の温もりが伝わってきた。
先ほど引きずっていた脚をよく見ると、トゲのようなものが刺さっているのが見える。
「これか……」
彼は右手で、猫の脚に刺さったトゲを抜く。
「これで大丈夫。トゲが刺さってたんだ。消毒とかはしといたほうがいいかもしれねェが」
「あ、はい。消毒は、私がやります」
「そうか」
そう言うと、彼はゆっくりと左手に抱いた黒猫を少女に渡した。
少女はしっかり両手で猫を抱きかかえる。あれだけ警戒していたので、猫が抵抗するかと思った
けれど、そうでもなかったようだ。
「それじゃ、頼んだぜ」
そう言って彼は再び歩き出す。
「あの――」
その後ろ姿に少女は声をかけてきた。
「あン?」
「猫、お好きなんですか?」
「そういう訳じゃねェんだけど、なんか昔から動物に好かれているっていうか」
「はあ」
「じゃ、俺はこれで」
「ありがとうございます」
少女は猫を抱きかかえたまま頭を下げる。
彼女の頭についている赤色のリボンがふわりと揺れた。
そして顔を上げて見せる笑顔。
(カワイイじゃねェか)
春の昼下がり、彼はふとそんなことを思った。
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