695: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2012/01/20(金) 21:02:31.36 ID:W7oVHpI5o
地上のセミの声が届かない地下鉄のホーム。
そこで播磨とまどかは並んで電車が来るのを待っていた。
ふと、播磨がポケットの中に何かを見つける。
「どうしたの? 拳児くん」
隣にいるまどかが聞く。
「いや、なんかズボンのポケットに入ってた」
そう言ってポケットから異物を取り出す播磨。
手に取って見ると、それは指輪であった。
しかし、覚えのない指輪だ。
「それ、指輪? どうしたの?」
「いや、わからん」
播磨はじっくりとその指輪を観察する。
それは“何の変哲もない玩具の指輪”だった。
「ふむ」
「それ、拳児くんが買ったの?」
「いや、わからん」
播磨は再度否定する。
「だけどよ――」
播磨は無意識に言葉を発する。
「大事なモンのような気がする」
そう言うと、播磨はその指輪を再びポケットの中に入れた。
「へえ、そうなんだ」
まどかはそう言ったが、それほど興味はないようで、すぐ別の話題を話しはじめた。
(大事な物か……)
自分の言った言葉に少し驚きつつ、それを表に出さないよう彼はまどかと話を続ける。
(せっかく東京に来たんだし、何か買い物でもして帰るか。できれば何か、
記念になるようなモンでも)
そんなことを思いながら。
おわり
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