18:JK[saga]
2011/12/15(木) 19:31:21.50 ID:fJUeZbYv0
「私は何度も手首を切ってきた!
世界を終わらせるために!
世界の罪の浄化のために! 罪深き人類の浄化のために!
こんな事が月夜叉! 君に出来るか、出来るのか!
月夜叉ッ!」
見事な理屈だった。
昴自身、自分でよく出来たと褒めてやりたいくらいだった。
だのに、月夜叉は無表情に淡々と返すのだ。
無論、何の感動も感情も存在しないままに。
『手首切りなど、私には出来ない。
否、手首を切る事に何の意味も見出せない。
結局、手首を切り、何がしたいのだ、昴?」
「聞いてなかったの?
私は薄汚れた人間の世界なんて真っ平なんだよ!」
そうだ。その通りだ。と昴は思った。
人間など滅亡してしまえばいい。
皆、死の浄化に至ればいい。
されども、何故人間を超越した月夜叉にそれが分からないのか。
その理不尽が昴を苛立たせていた。
人類の真の姿を知っている自分自身。
まさしく人類を超越したと言えるだろう。
ならば、何故、同じく人類を超越している月夜叉にそれが分からないのか。
昴はやはり認めたくないのだ。
月夜叉には感情など微塵も存在していないと。
月夜叉には感情が無い。
夜叉故に感動も理念も誇りも何も無い。
昴の苛立ちも理解不能なのだと。
故にどれだけ昴が月夜叉に言葉の刃を投げ掛けようと、理解する事など不可能なのだと。
『昴。人の子はそれほど薄汚れているのだろうか』
月夜叉は問う。
「そうだ。
自然を破壊し、動物を虐殺し、地球を破壊している!」
昴は叫ぶ。
『それが薄汚いと言いたいのか。
生命体は生存の為に全事象を利用するものでは無いのか』
無論、月夜叉は罪の意識もなく訊ねる。
彼女の中にあるのは、淡々とした事実のみだ。
「じゃあ人間とは何なんだ!
同族で殺し合う人間に存在価値などあるのかッ?」
昴は絶叫する。
自分は幾度もこの理論で周囲の愚鈍共を説き伏せてきた。
正しいのは自分なのだ。
死を望んでいる自分だけが正しく、周囲の愚鈍共はそれに気付かない醜悪な生命体なのだ。
彼女は思って絶叫する。
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