17:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga]
2011/12/23(金) 02:30:30.34 ID:c4Axoe8J0
それは5月の中頃のことだった。
昼休み、いつものように一人で図書室にやってきたマミは、お気に入りの窓際の席が誰かに取られているのを見てほんの少しがっかりした。
(あ、先客だ)
しかしすぐに、その小柄な後ろ姿にどことなく見覚えがあることに気づいた。
(あれ?この子、もしかして……)
相手も気配に気づいたのか、振り返ってマミの顔を見た。
そして一瞬の間をおいた後、にっこりと笑みを浮かべて、言った。
「ひさしぶりだね、マミ」
それはマミの幼なじみのあきだった。
「あき!本当、ずいぶんと久しぶりね。図書室に来るなんて珍しいのね」
「えへへ」
あきはあどけない顔を崩して笑う。昔とちっとも変わらないな、とマミは思った。
「勉強していたの?」
机の上にノートと辞書が置かれているのを見てマミが聞くと、あきは少し決まりが悪そうな様子を見せた。
「ん……まあ、そんなとこかな……」
よく見ると、辞書はイタリア語の辞書だった。
「!イタリア語を勉強していたの?すごいわ。憧れてるって言ってたものね、イタリア留学」
あきの父親は会社を経営していて、家は比較的裕福だった。
小学生のマミがあきの家に遊びに行くと、きれいな母親がいつも美味しいお菓子と紅茶を出してくれるような、そんな家だった。
家族でよく海外旅行もしていて、中でもイタリアが一番好きだと、あきはいつも言っていた。
「うん……」
笑みこそ浮かべていたが、あきはあまり元気がなかった。
マミが言葉に詰まっていると、あきは急に思いついたように言った。
「ねえマミ。屋上、行こ」
「え?」
「今日、すごくお天気いいし。ね、屋上行こ」
そう言うとマミの返事も待たずに机の上を片づけ始める。マミは戸惑いながらも窓の外を見た。
確かに、とても爽やかな5月の空が広がっていた。
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