368:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 21:58:25.14 ID:GFjxftzi0
舌を打つ。
いつ何時でもそうだったが、やはりこの女と言葉を交わしていると心がささくれだつ。
369:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:00:24.12 ID:GFjxftzi0
簡潔にすぎる説明に納得できず、ステイルはなおも事実を追究するべく眼光を鋭くする。
しかし、ローラの浮かべる表情に気勢を削がれて口を噤んだ。
彼女の面持ちが意味するところを言葉で説明するのは難しい。
それでもあえて何か、無理矢理形容する文句を探すなら――――今にも死にそうな顔、という他に思いつかなかった。
370:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:02:35.23 ID:GFjxftzi0
「なんだステイル、お前本当に何も知らされてねえのな」
「あ゛?」
371:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:03:35.02 ID:GFjxftzi0
――――はず、だったのだが。
「……君たち、何をやってるのかな?」
372:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:06:37.63 ID:GFjxftzi0
ステイルの歯がギリ、と部屋中に響き渡るような派手な音を立てて軋んだ。
苦虫をグロス単位で噛み潰したような味が奥歯のさらに奥から染み出してくる。
歪みきった相貌が全世界のお茶の間に電波を通してお披露目されていることも、怒りのあまり頭から吹っ飛んだ。
373:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:09:19.56 ID:GFjxftzi0
その表情はことこと煮込んだシチューのように、芳醇な幸福の味わいに染まりきっていた。
とろけたミルクのごとく薄く色づいた頬が、崩れるか崩れないかの瀬戸際でかろうじて最大主教としての体裁を保っている。
それ以外の部位は蜂蜜を塗りたくったも同然の甘い香りを放って、参列者を老若男女問わず惹きつけていた。
唇にルージュは差されず、アイラインも自然のまま。
374:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:11:17.37 ID:GFjxftzi0
「ははは、そう緊張せずとも。どうだいインデックスちゃん。ステイルくんは、ちゃんと君の幻想(くのう)を壊してくれたかな?」
「うーん……半分ぐらい、かも。乙女の懊悩は、一朝一夕には解決できないほど深いんだよ」
375:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:12:43.07 ID:GFjxftzi0
踵を返して妻と息子(とついでにローラ)の待つ最前席へ戻る、父親の後ろ姿。
それを束の間目で追ってのち、ステイルは花嫁――――インデックスへと向き直った。
376:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:14:06.35 ID:GFjxftzi0
「……申し訳ない、総大主教。その、ただ今列挙された方々すべてが、僕に?」
「うむ」
377:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:16:30.77 ID:GFjxftzi0
「丹念に作り上げた手作りの一品×千枚だ、ありがたく思っていいぞ」
「……メッセージカードのようなものですか? それにしても多すぎです。限度というものを知ってください」
378:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/02/26(日) 22:17:35.73 ID:GFjxftzi0
仰角九〇度、距離三メートルの地点から威勢のいい声。
いま一度天窓を仰ぎ見れば、開け放たれたガラス戸から舞い込む大量の紙束。
会場を襲った紙吹雪に一堂が騒然とする中、そのうちの一枚をインデックスが拾い上げた。
片面が見覚えのある赤。
422Res/296.80 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。