過去ログ - とある主人公たちのハーレムルート
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9:骸の蝉[saga]
2012/01/02(月) 23:44:53.78 ID:Ct7sawydo
滝壺の能力、AIMストーカーは体晶を用いることで”正しく暴走”し、一度認識した能力者のAIM拡散場を銀河の果てまで追跡する。
全ての物理的防御を無視して対象を射抜き焼き殺す麦野の能力との相性は抜群だった。
便利だったから使って。
切り札だったから使わせた。
結果、滝壺の命が縮まるとわかっていて使わせた。
――そういう表現しか知らなかった。
もう浜面は麦野を許している。滝壺も一緒だ。それは理解している。でも一度動いてしまった歯車が元に戻ることはない。
浜面は滝壺を選択し、麦野を捨てた。
アイテムの中に居場所があっても浜面の横に居場所はない。
それはもうどうしようもないこと。
――嫌われて当然だよね。
麦野は一人胸の中で呟く。
――だからこんな化け物になっちゃったんだ。
言葉に出せない思いを繰り返す。
――アイツが滝壺にいくのは当然だったんだ。
苦しいから、敢えて明るく問いかけた。
「どうしたのよ。言いたいことあるんでしょ?」
何か照れている滝壺に言葉を促す。
ただ顔が見たいというだけで違う階から降りてきた訳でもあるまい。きっと何かを伝えたいのだろう。ぴんと張った背筋に確固とした芯を感じた。
苦しくても我慢しよう。
顔には出さないでいよう。
大丈夫、私は強い。
視線を合わせる。滝壺が大きく息を吸う。
そして力強く宣言した。
「私ね、体が治ったらはまづらに抱いてもらおうと思うの」
「――っ!」
弱かった。
心乱された。心臓を鷲掴みにされた。唇を噛まなかったら叫んでいたのかもしれない。
何時か必ずそうなることで、単純に刻限が見えていないだけのことを改めてその唇で言霊にされて、魂が揺さぶられるほどに動揺した。
形のない何かを失いそうになる。
どこか遠くを見ながら滝壺が笑っている。こころなしか頬を染めている。当たり前だ、自分が女になると高らかに告げたのだから。
恥ずかしがりながら、気高そうに。それでいて嬉しそうに。
こんな言葉を口にできるほど誰かを好きになれたことを誇らしげに。
麦野の目には眩しいほどの笑顔。
「そ、そう。決めたんだ」
震える舌先を黙らせるように麦野が息を呑む。
右手を胸の前で握って暴れる心臓を落ち着かせる。
「決めたんだったら、応援するよ」
小さく、まるで叫びのように言う。はっきりと、嘆くように言う。
引きつっていないだろうか。不自然ではないだろうか。おかしくないか。不格好ではないか。
大丈夫、こんな顔だ。多少不格好だろうと構うものか。
「あんたじゃないけどさ、応援する。怖いかもしれないけど幸せになりなよ。浜面は浜面だからダメなときはとことんダメだけどやるときはヒーローにだってなれるからさ」
生皮を剥がすような感覚。自分の言葉が自分の内側を切り刻んでいくのを麦野は理解する。
「浜面の童貞臭は酷いもんだからさ、一回覚えたら毎日のように弄ばれるんじゃない? 万一マンネリになってもバニースーツで覚醒した猿になりそうだし」
けらけらと愉快に麦野は言う。
言って、滝壺の大ぶりの乳房を鷲掴みにする。
きゃあ、と騒ぐこともなくキョトンとした顔で滝壺が麦野を覗き見る。
「私ほどじゃないけどさ、滝壺スタイル良いんだからさ。ここなんかいい武器になるんじゃないの?」
私ほどじゃないけどね。心の中でだけもう一度言う。
負けてない。ううん、負けてなかった。今はこんな体だけれども負けてなんかいなかった。体だけならあいつは私の方を見ていたはずだ。
そんな思いが今でも麦野の中には確かに存在する。
感じさせてはダメだ、と麦野の強すぎるプライドが虚勢でしかない笑みを崩させない。
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