過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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221:にゃんこ[saga]
2012/03/10(土) 19:16:37.60 ID:AHpyqVlv0
和が苦笑を浮かべ、私と憂ちゃん、純ちゃんの順で顔を見回す。


「軽音部だから通じるかと思ったんだけど、意外と通じなかったわね。
『ジ・アーティスト』……、三人とも知らないの?
律から辺りの指摘を待ってたんだけど……」


「そうですよ、律先輩!
軽音部なんですから、『ジ・アーティスト』くらい分かって下さい!」


妙に高いテンションで梓が和に賛同する。
和と梓の立ち位置が同じなんて、妙な光景だな……。
つーか、自分の仲間が見つかったからって、そんなにはしゃぐなよ、梓……。
私だってプリンスくらい知ってる。
そんなに聴いた事は無いけど、相当なビッグネームって事くらいは分かる。
でも、『ジ・アーティスト』ってのが何なのかはよく分からない。
プリンスと何かの関係があるらしいって事だけは分かるんだが……。

埒が明かないと思ったのか、
梓が溜息を吐きながら私に説明を始めた。


「いいですか、律先輩?
プリンスは♂と♀のマークを組み合わせたような記号で名乗ってた時期があるんです。
錬金術に関連した意味のある記号らしいんですが、そこは省きましょう。
プリンスはですね、その記号に読み方を設定しなかったんですよ。
だから、音声では彼の名前を伝える事が不可能になったんです。
そのため、ファンやDJは彼を『ジ・アーティスト』、『元プリンス』、
もしくは『かつてプリンスと呼ばれたアーティスト』と呼ぶようになったんです。
軽音部なら常識な事ですよ?
それなのに律先輩ったら……」


いや、知らねーよ、そんな細かいエピソード……。
それって本当に常識なのかよ……。
と言うか、責められるの私だけかよ……。
純ちゃん達が知らなかった事についてはスルーなのかよ……。
多分、軽音部の中じゃ、梓と澪以外、誰も知らないと思うぞ。

しかし、梓の奴、はしゃぐ時はとことんはしゃぐよなあ……。
もしかすると、そういう話もしたくて、軽音部に入部したのかもしれないよな。
そうなると、期待に添えなくてすまんかったとは思うんだが……。


「まあ、候補よ、候補。
インパクトはあったでしょ?」


流石の和も梓にこんなに食い付かれるとは思ってなかったらしく、
ちょっとした苦笑いを浮かべながら、軽い感じに言った。
確かにインパクトはあった。
珍しく梓が食い付くくらいには、物凄くインパクトがあった。
だけどなあ……。

私は大きく溜息を吐いてから、はしゃぐ梓の頭をポンと軽く叩いた。


「落ち着け、梓。
おまえがプリンスを聴いてるのは分かった。
オマージュも悪くないと思う。
でもな、よく考えてくれ。
和の案を採用しちゃうと、
私達は『かつて放課後ティータイムとわかばガールズと呼ばれたアーティスト』、
……って呼ばれる事になっちゃうぞ?」


「……あっ」


はっとした表情で梓が呻くみたいに言った。
はしゃぎ過ぎてて、そこまで考えが至っていなかったらしい。
プリンスを聴いているとは言え、
梓もその名前で呼ばれるのは嫌らしく、それ以上の言葉を止めた。
まあ、『かつて放課後ティータイムとわかばガールズと呼ばれたアーティスト』じゃなあ……。
何か解散したみたいで気分が悪いしな……。


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