242:にゃんこ[saga]
2012/03/16(金) 20:09:42.40 ID:/aEQ2O590
「あの樹……、大木なんだし、切られてなんかいないわよね?
今もあの公園にあるはずよね……?
最近行ってなかったからそこが分からないんだけど、
私の中の唯とあの樹の記憶は夢や幻想なんかじゃないわよね……?」
「あ、ああ……、確かあの樹はまだあるはずだよ。
この前、聡が年甲斐もなく久し振りに登っちゃった、って話をしてた憶えがある。
大体、あんなでかい樹、切ろうとしたら結構な騒動になるはずだし……。
なあ、和……。
まさか、そういう事か?
私達は気付かなかったんだけど、あの公園に、あのでっかい樹が無かったって事なんだな?」
「ええ、そうよ……。
それで、記憶違いかと思ってこの町の地図や観光案内を調べてみたのよ。
ローカルな地図だと、公園の樹まで鮮明に描かれてる地図もあるから。
でも、地図の方にも、観光案内にも、樹は載ってなかったわ。
公園を遠景で写した写真にも……。
あんなに大きな樹なのに……。
学校にあった地図だけじゃ心許ないから、
律達に集めてもらった地図も調べてみたのに、やっぱり樹の姿は何処にも無かったわ。
勿論、それだけなら記憶違いかもしれない。
あの公園にあったと思ってた樹が、
実は別の公園にあった樹だったって話かもしれないわよね?
だから、私はもう一つ確かめてみる事にしたの。
実は私、桜高の校庭にね、生徒会の皆でタイムカプセルを埋めてたのよ。
十年後の夏、皆で開けようって約束をしてね」
「タイムカプセルって、和も小学生みたいな事してんなー……。
まあ、私達も軽音部でタイムカプセルを埋めたんだけどな。
色々入れたなー、アレ。何かもう懐かしいよ」
「何よ、律達も埋めてるんじゃない」
「私達はいいのだよ、和くん。
勿論、発案者は唯だったんだけどさ、
そういう小学生みたいな事が平気でやれるってのは、結構凄い事だよ。
あいつが言い出してくれたおかげで、思い付いてはいたけど、
照れもあって言いにくかったタイムカプセル計画が実行出来たんだよな」
「そうよね……、唯ってそういう子よね……。
だから、私もあの子が居ると……。
と、今は軽音部じゃなくて、生徒会のタイムカプセルの話よ。
それで私、ふと思い立って、タイムカプセルを掘り出してみる事にしたのよ。
澪と憂に手伝ってもらって、今日、埋めた場所を掘ってみたの。
生徒会の皆には悪い気がしたけど、確かめたい事があったから……。
場所は間違ってなかったと思うわ。
五ヶ月前の事だけど、まだ昨日の事のようにはっきり憶えてる。
でもね……、その場所にタイムカプセルは埋められていなかったの。
ううん、それだけじゃない。
ここ数年は一度も掘り返されてないみたいに、
タイムカプセルを埋めたはずの地面はとても固かったのよ。
そこには最初から何も埋められてなかったみたいに……」
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