過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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339:にゃんこ[saga]
2012/04/20(金) 18:04:18.01 ID:CZrAexFF0
不意に梓が何故か明るい声を出した。


「それなら先輩方、私、一ついい事を思い付いたんですけど……」


「な、何だよ……」


場違いな梓の明るい声に気圧されながら、私は絞り出すみたいに訊ねてみる。
すると、急に梓が私の左手を握ってから、続けた。


「皆さん、手を繋ぎませんか?」


「どうしてだ?」


「もう……、律先輩は分かってませんね。
転移……、あ、今は私達がロンドンに来てしまった現象をそう呼びますけど、
また転移が起こった時にも皆で手を繋いでおけば、大丈夫じゃないかって思うんです。
少なくとも、私達がまたバラバラに何処かに転移させられる事は無いって思うんですよ」


「……わけが分からないんだが」


「よく考えて下さいよ、もーっ!
あの転移が人間の身体だけに作用する現象なら、
今の私達は真っ裸でロンドンに飛ばされる事になってたはずだと思いませんか?
でも、私達は今真っ裸じゃありません。
と、いう事はですね……」


そこまで言われてやっと気付いた。
ゲームやってる時とかによく思う事だ。
人体に作用する転移装置なのに、何で服とか持ち物も一緒に移動してるんだよ、ってやつだな。
そういう時の辻褄合わせは、大人の事情以外では、
その人が触れてる物も一緒に移動出来るんだっていう設定がお約束だよな。
んな馬鹿な、と思わなくもないけど、今の私達の状況がまさしくそれだった。
だったら、その真偽はともかく、梓の言う事にも一理あるのかもしれない。


「なるほどな……。
身体に触れてる物も一緒に飛ばされちゃうって事か。
だったら、皆で手を繋いでおけば安心だよな……。
おっし……、皆で手を繋ごうぜ!」


皆に分かりやすく説明してから、私は歩いてムギの左手を握った。
梓の案に納得したわけじゃない。
気休めみたいなものだった。
だけど、気休めでも何でも、今は縋りたかった。
少なくとも梓はその案を信じてるみたいだし、梓の気が楽になるんなら、それもいいはずだ。


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