410:にゃんこ[saga]
2012/05/09(水) 19:45:01.03 ID:OawZK8Yu0
でも、私は自転車を停めて、真剣な表情を澪に向けた。
少しだけ先に行った澪も自転車を停め、私の方に振り返って言った。
「どうしたんだ、律?」
「車を運転するってのは半分冗談だったけどさ、半分は本気なんだよ、澪。
そろそろ本気で考えなきゃいけないって思うんだ。
このままロンドンに居るのか、他の街に行ってみるのか……ってさ。
それでもし他の街に行ってみるんだったら、必然的に車は必要になってくるもんな……」
私が言うと、澪も真剣な表情になって頷いた。
長い髪を横に流すと、口を開き始める。
やっぱり、澪だって考えてなかったわけじゃないんだ。
「そうだな、律。確かにそうだよ。
私もずっと考えてた。
このままロンドンに居ていいのか、違う街に行くべきなんじゃないかって。
それこそ、日本を目指すべきなんじゃないかってさ。
日本に戻ればさ……、確証は無いけど……、ひょっとしたら……」
それ以上の言葉を澪は言わなかった。
確証の無い言葉を続けられるほど、私達は希望を持ててない。
でも、澪が何を言おうとしてるのかは分かった。
日本に戻れば、私達の街に戻れば、和達が待っててくれてるんじゃないかって。
今も和達はそこに居るんじゃないかって。
そうだったら、どんなにいいだろう。
もう一度、三人と会えるんだったら、どんなにいいだろう。
唯達はどれだけ喜んでくれるだろう……。
勿論、確証なんて一つも無い。
和達が日本で待ってくれてる可能性は、きっと相当低い。
そんな気がする。
大体、日本までどうやって戻るってんだよ。
日本は島国だぞ?
自動車だけじゃどうやったって辿り着けない。
韓国辺りまで行って、船か飛行機でも操縦するか?
それこそどうやって操縦するってんだよ。
いくら何でもムギだって船と飛行機を操縦するのは無理だろう。
どうやって戻れってんだ……。
それでも、このままロンドンに滞在する事が得策だとも思えなかった。
ずっとロンドンに居たって、少しずつ精神を擦り減らしていくだけだ。
永住する決心が出来ない限り、
いっそ当ての無い旅に出た方がマシな気もしてくる。
当てが無くても、少しでも前に進めるなら、そっちの方が安心は出来る。
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