過去ログ - 律「閉ざされた世界」
1- 20
463:にゃんこ[saga]
2012/05/22(火) 18:05:15.79 ID:x6fXrDtV0
「唯は病室のベッドに横たわってた……。
悲しそうな表情の憂ちゃんや和達が唯を見てた……。
それを私達が遠巻きに見てた……。
そこまでは思い出した。思い出したんだ。
それで……、唯がベッドで寝てる理由も思い出したよ。
唯は怪我をしたんだ。とんでもない大怪我を。
頭に……さ」


頭……。
そう、頭だ。
私達が大怪我をした時、唯は私達と同じく、
そして、よりにもよって頭を大怪我したんだ。
だから、唯はベッドの上にずっと横たわってたんだ。
横たえられていたんだ。
脳死……、ではなかったと思う。
まだ思い出せてないだけかもしれないけど、脳死じゃかったはずだ。
だけど、唯は目を覚まさなかった。
頭の何処かに大きな損傷を負ったって話を聞いた記憶はある。
これから目を覚ますかどうかわからないらしいわ……、
って、そう悲しそうに呟く和の表情だけはしっかり思い出した。

私達はそれが嫌だった。
脳死でないにしても、唯が目を覚まさないなんて耐えられなかった。
また唯と話したかった。笑いたかった。演奏したかった。
どうにかしてまた一緒に居たかった。
傍に……、居たかったんだ……。

そうして、私達の願いは叶った。
何がどんな作用を起こしたのか。
何でこんな状態になってるのか。
その辺りはまだ何も分からないけど、とにかく夢は叶ったんだ。
叶って……しまったんだ……。
それがよかったのかどうかは……、私にもまだ……、分からない。

しばらく沈黙が部屋の中を包んだ。
聞こえるのは苦しそうな唯の呻き声だけ。
沈黙してる場合じゃないのは分かってたけど、
何をどうしたらいいのか、その解決の糸口も掴めてなかったからだ。


「あ、あの……」


少し呆然とした様子ながら、梓が呟き出した。
何か考えた事があるんだろう。
「どうした?」と私は梓に訊ねてみる。


「はい……。
この世界が唯先輩の夢だって言うのは……、
あの……、私も何となく分かるんです……。
律先輩もおっしゃってましたけど、こんなに日焼けが治らないのなんて初めてで……、
もしかしたら私の身体は本当の私の身体じゃないんじゃないかって、そう思わなくもなかったんです。
唯先輩の私に対するイメージが、私の身体を作り上げたってそんな気も……します……。

ですけど……、どうして……、
どうしてこんな事が起こってるんでしょうか……?
私、怪我の記憶はあんまり無いんですけど、
律先輩の言う事が事実だとしたら、私、この世界に来れて嬉しいです。
唯先輩が……、目を覚まさないなんて嫌です……。
傍に居て、笑っていてほしいです……。

だけど……、どうしてこんな不思議な事が起こってるんでしょうか。
あの……、もしかして……、ひょっとしたら、唯先輩が……。
いえ、でも……」


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice