過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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549:にゃんこ[saga]
2012/06/12(火) 18:46:43.24 ID:CIyJ1PTT0
「梓……、おまえの言う通りだよ。
私はおまえと一緒に風呂に入った時、おまえを抱き締めようと思った。
抱き締めてキスをすれば、安心出来ると思った。
安心させてやれるって思った。
でも、それは出来なかった。
私の勝手な暴走と下心でおまえを傷付けたくなかったからだ。
いや、多分、怖かったからでもあると思うよ。
おまえとそんな関係になってしまったら、私達はもう二度と戻れなくなる。
皆で笑い合ってた頃には戻れなくなるって思ったから……、
あの日、おまえにキスしなかった事に、後悔はしてないんだ……」


「そんな……、そんなのって……ないですよ……っ!
私、嬉しかったのに……、戻れなくたって構わなかったのに……っ!
どうしてそんな……、今更……っ!」


梓の大粒の涙が止まらない。
自分でも自分が何を言ってるのか分かってないのかもしれない。
そう思えるくらい、梓は自分の心を曝け出していた。
この世界に来て以来感じていた辛さや寂しさや悲しさや怒りや、
そういう感情を受け入れてくれるはずの私に拒絶されてしまったんだ。
やっと安心出来るはずだったのに、
幸せになれるはずだったのに、それを私が台無しにしてしまったんだ。
梓の涙と怒りはもっともだと思う。
私だって自分がやられていたら、怒って、泣き出していたかもしれない。
でも、私には傍に居るだけじゃなく、突き放してくれる仲間が居た。
殴ってくれる澪が居た。
叱ってくれるムギが居た。
辛い決心をしてくれる唯が居た。
だから、今度は私が梓にそうしなきゃいけない時なんだ。


「ごめんな、梓……。
あの日、私が弱くて、おまえに頼ろうとして、本当に悪かった……。
そんな事しちゃいけなかったのに、私は……」


「いいんですよ!
律先輩の気持ち、私、嬉しかった!
嬉しかった……んですから、だから、私……、
もう戻れなくたって……、構わないですから……っ!
そんな事より……、一人になりたくない……。
一人になる事の方が怖いから……、
だから……、抱き締めて……、抱き締めて……下さい……っ!」


「梓……っ!」


私が低い声で呼ぶと、梓の肩が大きく震えた。
怯えた表情で私の顔を見つめている。
私自身に怯えてるっていうより、私に嫌われたんじゃないかって怯えてるみたいだ。
さっき、一人になりたくないって梓は言った。
それが梓の偽りのない本音なんだろうと思う。
元々、私達が高校を卒業する時、一人きりになる事を本気で怖がってた子なんだ。
誰よりも、孤独を怖がってるんだ、梓は。
だから、今日、もう誰とも離れないために私達の手首を包帯で結んだんだ。
今だって、自分を必要と思われたくて、
私の歪んでいた想いを受け入れようとしてくれてるんだろう。


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