615:にゃんこ[saga]
2012/06/27(水) 18:29:48.54 ID:1YUM5IIB0
◎
最初に転移させられた広場に辿り着いた時、正直、私は驚いた。
会場自体は雨よけに建てられたテントの中に、
レジャーシートを敷いただけの物だったけど、それはそれで十分だった。
私達は別にそんなに豪華なライブをやりたいわけじゃないんだからな。
それより驚いたのは揃えられた楽器の方だ。
ギー太にエリザベスにむったん……、
ムギのキーボードに私のドラムまで全て同型の楽器が揃えられていたからだ。
いや、同型ってだけじゃなく、カラーリングまで全部同じだった。
よく見ると、シート脇に置かれてるギターケースとかも同型なんじゃないか?
「おい、これ……」
私が指差して訊ねてみると、
走ってきた事でちょっと息を切らした唯が、両手を腰に当てて鼻息を荒くした。
「あ、気付いた、りっちゃん?
色んな楽器屋を回って皆のと同じ種類の楽器探すの大変だったんだよー?
もっと褒めてくれていいんだよー、ふんすっ!」
いやいや、楽器屋を回ったからって、色まで同じ楽器を全員分集められるもんなのか?
いくら何でも都合よ過ぎだろ、それ……。
待てよ……?
そうか……、ここは唯の夢の世界なんだよな……。
そう楽器に詳しいわけじゃない唯の事だから、楽器の種類の多さなんて考えずに、
楽器屋を回れば全員分の同じ楽器が見つけられるはずだって、無意識の内に思っていたのかもしれない。
それで都合よく私達の楽器と同型の楽器を揃える事が出来たのかもしれない。
私は唯にそれを指摘しようと思って口を開いたけど、すぐにそれをやめた。
やめよう。
楽器自体は唯の夢の産物かもしれないけど、
楽器屋を回って全員分揃えてくれたのは、確かに唯達の努力の結晶なんだ。
大変だった、って言ってたわけだし、かなり苦労して探し出してくれたんだろう。
それだけは間違いないんだ。今はその事だけで十分じゃないか。
私が唯の頭に軽く手を置いて「ありがとな」と言うと、唯は照れた様に微笑んでくれた。
「それにしても……」
自分のムスタングと全く同型のギターを手に持ちながら、梓が目を俯かせて呟いた。
「本当に今からライブをするんですか、唯先輩?
勿論、私だってセッションはしたいですよ?
でも……、まずは皆で練習してからの方がよくありませんか?
最近全然演奏出来てませんでしたし、私、自信無いです……」
「いいんだよー、あずにゃん」
言いながら、唯が梓に抱き着く。
梓は唯に身を任せながらも、また首を傾げて訊ねていた。
「いい……ですか?」
「うん、いいんだよ、あずにゃん。
自信が無いのは皆同じだし、練習出来てないのだって皆同じなんだよ?
でも、何度も言うけど、下手でもいいんだって思うんだよね。
これから私達がやりたいのは上手いライブなんじゃなくて、
今の私達が出来る今の私達の精一杯のライブなんだもん。
それはあずにゃんも一緒でしょ?」
「そうだぞ、梓」
唯の言葉を継いだのは澪だった。
唯に抱き締められながら、梓が澪に視線を向ける。
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