632:にゃんこ[saga]
2012/06/30(土) 17:53:54.63 ID:zmR1v/Ro0
「元の世界で届けなきゃいけないんですよね、私達の演奏を。
憂に、純に、和先輩に、届けたい皆の前で、直接。
今度こそ私達の想いを届けるために。
今の想いを絶対に忘れずに……」
言った後、気障過ぎたと思ったのか、梓が頬を赤く染めて笑った。
確かに気障だけど、それでよかったし、梓の言ってる事は間違ってなかった。
私達はこの想いを届けなきゃいけない。
この夢の世界じゃなくて、元の世界で。
想いを、届かせるんだ、今度こそ。
そのためにも、私達は唯と一緒に元の世界に戻るんだ。
でも、それはまだずっと先の話だと思うから……、だから……。
「忘れちゃ……いけないんだよな」
澪が梓の言葉を継ぐみたいに口を開いた。
その澪の表情は柔らかい笑顔だった。
ずっと弱かったはずの澪が、もう私達の中心で皆を支えてくれている。
ちょっと寂しくはあるけど、凄く嬉しい事でもあった。
皆、変わっていくんだ。
現実の世界でも、この夢の中の世界でも、少しずつ確実に変わっていく。
その変化を少しでもいい方向に向けられたら、私も嬉しい。
多分、澪はこの世界でいい方向に変われたんだろう。
私も澪みたいにいい方向に変わっていかなきゃな……。
そのためにも、私は皆と話しておかなきゃいけない事がある。
そう強く思った。
私の考えに気付いたのか、澪が私と視線を合わせてから静かに頷いた。
こいつは妙な所で私の考えを感じ取っちゃう事があるんだよな。
きっと私の小さな決心を認めてくれたんだろう。
私がその話を切り出しやすいように澪が話を変えてくれる。
「私も元の世界に戻るために、精一杯考えるよ。
今更言うのも変なんだけど、この世界が本当に夢の世界なのかどうか確信は持ててないんだよな。
あくまでその可能性が高いってだけだからさ……。
だから、私、この世界についてもっと調べて、元の世界に戻る方法を考える。
もしこの世界が本当に唯のサヴァン能力の発現だったら、
その制御方法についても唯と一緒に探して行こうと思うんだ。
だからさ……、元の世界に戻れる日まで、私、忘れないよ。
皆でこうして演奏した事、あんまりいい出来じゃなかったけど演奏出来た事、
和達や元の世界の皆に届けたかった想いの事……、絶対に忘れない。
想いを届かせたいって事だけは、忘れないよ、ずっと……」
結局の話、私達に出来る事はそれだけなんだろうな、って私は思った。
この世界に永遠は無い。
約束で相手を縛る事も出来ない。
大切な人と傍に居続ける事が正しいわけでもない。
誰かを縛り付ける事だけは絶対にしちゃいけない。
そんな中で私達に出来る事は、想いを心の中にずっと持ち続ける事だけだ。
皆の事を憶えていて、また会いたい、想いを届けたい、って強く思い続ける事だけなんだ。
言うほど簡単な事じゃないのはよく分かってる。
卒業から四ヶ月、梓とたったそれだけの時間離れていただけで、私は不安で仕方が無かった。
絆を信じようとしながらも信じ切れなくて、
多分、それもきっかけとして、私達はこの世界に迷い込んだ。
強がりながらも弱い私の事だ。これからも何度も不安になるだろうな。
でも、この世界にずっと居て、こんな私にもやっと一つだけ分かった事がある。
想いを強制て心を縛って繋いだって安心出来なかったし、全然嬉しくなかった。
皆が傍に居るのに、寂しくて辛かった。
もうそんな気持ちにさせちゃいけないんだ、私自身も、皆も。
だから、その想いだけは胸に抱いて、これから前に進んで行こうと思う。
あの一陣の風が吹いたって、その想いだけは絶対に……。
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