過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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637:にゃんこ[saga]
2012/06/30(土) 17:56:21.04 ID:zmR1v/Ro0
「立って下さい、唯先輩。
私も立ちます。自分の足で立ってみせます。
まだ不安ですけど……、
さっきも吹いた風の事を考えると怖くなりますけど……、
それでも、私は立つです!
唯先輩と元の世界に戻りたいですから!
私達の新バンドの曲を唯先輩達に聴いて頂きたいですから!
ですから……!」


「あずにゃん……」


「勘違いしないで下さいよ!
元の世界に戻って、三年寝太郎な唯先輩に文句を言いたいだけなんですからね!
元の世界に戻った時は、覚悟しておいて下さいよ!」


「ええぅ!?
あずにゃん、おっかないよう……」


怯えたような表情になった後、すぐに唯は微笑み直した。
目尻を指で拭って、涙を振り払って、
私達の大好きな輝く笑顔で、
唯は笑った。


「それにしても……、だ」


私も笑顔になりながら呟くみたいに言った。
このまま皆で笑顔で居たかったけど、まだ話さなきゃいけない事が残ってる。
流石に大丈夫だと思うけど、またすぐに一陣の風が吹かないとも限らないからな。
時間の猶予に頼るのは、この世界ではもうやめておくべきなんだ。
私はちょっとだけ溜息を吐いてから続ける。


「今回、皆で転移させられたのはレジャーシートを敷いてたおかげか?
見事なくらい、レジャーシートの上の物が全部転移させられてるじゃんかよ。
私達だけじゃなく、楽器とかギターケースも一緒にさ。
大らかと言うか大雑把と言うか……、
まだ確定したわけじゃないけど、やっぱ唯の夢だよなー、これ」


「えー……。何それー……」


唯が頬を膨らませて私にジト目を向ける。
私は少しだけ苦笑してから、唯の頭に手を置いてやった。


「褒めてんだよ、一応な。
レジャーシートのおかげかどうか分かんないけどさ、
京都……だと思うけど、今回は皆一緒に京都まで転移出来たじゃんか。
偶然だとしても助かったよ。
私、まだ皆に話しておきたい事があったからさ」


「話したい事……?」


私はもう一度レジャーシートの中央に立って、皆の顔をまた見回した。
風が吹く前、言えなかった言葉を今度こそ言ってみせる。


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