640:にゃんこ[saga]
2012/06/30(土) 17:57:50.95 ID:zmR1v/Ro0
「一番考えちゃうのは、やっぱり元の世界の時間経過だよな。
もし今、元の世界に戻れたとして、元の世界はどれくらいの時間が経ってると思う?」
澪がそういう風に言うという事は、
元の世界とこの世界の時間経過が異なってる可能性が高いって事なんだろう。
確かにこの世界と元の世界の時間経過の速度が同じだって確証は全然無い。
だとしたら、この世界と元の世界の時間差はどれくらいになるんだろう?
「一年くらい……かな?
ううん、何となくなんだけど……」
ムギが皆に訊ねるみたいに呟く。
一年か……。
それくらいならいいけど、でも、あんまり嬉しくないな。
それじゃあ、目覚めた所で私達は確実に留年だ。
いや、私達はともかくとして、高校三年生の梓の方が問題だった。
受験も全部終わっていて、高校三年生をもう一度やり直す事になるなんて、梓があんまりにも可哀想だ。
でも、それも一年程度だったらって話だ。
ひょっとすると、一年どころじゃすまないかもしれない。
下手をすると元の世界で五十年くらい経ってたっておかしくないんだ。
何てったってこの世界は夢の世界なんだ。
元の世界とどれくらいの時間差があるのかは分かったもんじゃない。
ちょっと私達が落ち込み掛けた時、
唯が人差し指を立てて妙に自信満々に言った。
「ひょっとしたら、一日くらいしか経ってないかもしれないよ!
長い夢を見てたはずなのに、三時間くらいしか経ってなかったって事よくあるでしょ?
だったら、元の世界の時間が全然経ってないって可能性もあるよね?」
「なるほど……」
私は思わず頷いていたけど、よく考えたらそれもちょっと嫌だった。
この体感時間で大体一ヶ月の時間が、
現実では一日しか経ってなかった……とか、物凄く脳に悪そうじゃんかよ……。
時間が経ち過ぎてるにしても、経ってないにしても、どっちにしろろくでもなかった。
元の世界に戻る意欲がちょっと失せて来るよな……。
でも、失せたのはちょっとだけだった。
元の世界がどうなってるにしても、私達は戻るって決めてるんだからな。
私は軽く溜息を吐いてから、静かに笑ってみせた。
「ま、その辺は元の世界に戻ってから考えるとしようぜ?
今そんな事考えてたって、取らぬ狸の皮算用ってやつだよ。
まずは元の世界に戻る事……、それを考えよう。
もしも元の世界で五十年くらい経ってて、
皆がお婆ちゃんになってたら、その時は笑い飛ばしてやるからさ。
それでも、ライブはしてやろうぜ?
老体に鞭打って一花咲かせてやろうじゃんか!」
「もう……、律先輩ったら……」
そうやって呆れた表情を浮かべながらも、梓は苦笑してくれていた。
気が付けば、私も笑っていた。
未来がどうなってるにしろ、不安に思い続けてたってどうにもならない。
結局、私達に出来る事は、未来がいい方向に向かってるって信じる事だけなんだ。
とても難しい事だと思うけど、私達はそれを信じて生きたいと思う。
信じるために、最後に梓にだけ耳元で囁いた
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