過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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327:火(お題:高架下)2/4[saga]
2012/05/10(木) 14:36:16.54 ID:LvS9fQcAO
 得体の知れない恐怖から自然と足早になり、いつしかわたしは駆けだしていた。

 ダンダンダンダンダンダンダン!!!

 ガラスを打ち据える音がトンネル内に響きわたった。

 道の先、天井から斜め左側にまわり込んできたそれがふいに視界に入る。

 同時に奇妙なことが起きた。

――アアアアアアアアア

 どこか遠くの方で人の甲高い叫び声が聞こえてくる。

 きょろきょろと目だけを泳がせて周囲を窺う。

 ほどなくして、それが自分の喉から発せられていることに気付いた。

 遅れてきた認識が追いついてくる。

 わたしは自分の口を両手で塞いだ。不随意に体が震えだし、歯がガチガチと鳴った。

 目に映ったもの。それは飛蝗に似ていた。ただそいつは人の倍の身丈があり左右非対称にねじくれている。

 異形の飛蝗は七本の足と生々しい白い腹をガラスにべたりと張り付けていた。濁った鉛色の目がこちらを見据え、その赤く塗れそぼる口がキチキチとせわしなく動きだす。

 わたしはなかば無意識に上着のポケットをまさぐった。さきに見つけたコインを探りあて、藁にもすがる思いでその中心の窪みを親指の腹で強く押した。


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