過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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463:卒業式(お題:パイプ椅子) 4/5  ◆Qfu.mTwFskGG[sage]
2012/06/01(金) 09:32:18.21 ID:wtElJCM/o
「お前は、何者なんだ。俺は、どうしたら良い」
駄目で元々と、男は再び少年に問いかけてみる。
「ぼくからは何も言う事は出来ません」
少年の肩が微かに上下した。
「ただ、ぼくはとても残念です。あなたはこんなところで何をしているんですか?」
少年は変わらず平坦な調子で言った。
その態度が男の焦りを逆撫でした。
「何をしているだって?俺は自分の意思でこんなところに来たんじゃない」
「そうでしょう。あなたにそんな勇気があるとは思えない」
「どういう意味だ、それは」
男の握り拳に力が入る。
「そのままの意味ですよ。あなたみたいな受動的な人が自らこんな場所に来るわけがない」
「知ったような口をきいてお前に何がわかる」
男の拳に微かに血が滲んだ。
「わかりませんよ、わかりたくもない。どうしてこうなってしまったんですか?」
男は限界だった。
パイプ椅子から立ち上がった男は少年の胸倉を掴み、その顔に口を近づけ叫んだ。
「ふざけるな。そんなことは俺が訊きたい」
少年の顔が傾き、初めてその表情が露になる。
それはまるで迷子の子供のような顔だった。
男をあざ笑うでもなく、男に怯えるでもなく、ただただ悲しいものを見るような表情だった。
少年は何も言わず男の目をひたすら見つめいる。それはまるで何かを訴えているかのようだった。
「わかったよ」
男は少年から手を離し、小さく舌打ちをした。
そして踵を返すと真っ直ぐに少年の指差した扉へと向かっていった。
扉は先ほどは違いすんなりと開いた。
扉をゆっくり開けながら振り返ると、子供らしく笑う少年の顔が見えた。


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