過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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989:あなたの声を祈りによって聴く可能性について7/10 ◆ihO9dxzf9I[sage saga]
2012/08/12(日) 23:42:45.40 ID:30xXBl/o0
 7月19日(木)晴れ
 広松に完勝。3ポイントのみならずドライブでも抜きまくった。帰り際にお疲れ、と声をかけると悔しそうに、お疲れ
っす、と声を振り絞っていた。部活の将来だとかそんなことを抜きにして、勝つこと自体が楽しい。見下せることの喜び
みたいなものではない。全力を振り絞った末に報われたことの喜びみたいなものとも違う。
 勝つことによって負けた方を認められる。負けた方の人間を大事な存在なんだと思えることの喜び。
 まだ言葉にはしきれないが、とにかく勝つことは楽しい。負けても意味がある、なんて言葉が甘く思えるくらいなんだ。
 7月20日(金)曇り一時雨
 『レヴィナス』を読み始める。時折意味がわからない箇所があるが、大事なことが書かれている気がする。
 初めから自分というものが存在するわけではないのだそうだ。自分は他人によって作り出される。自分があまりにも自
分の思い通りになるものだから俺は最初からいたのだと思いこんでしまうに過ぎない。とはいっても、他人もまた最初か
らいるわけでもない。自分がいないところに他人はいないのだから、自分と他人は共に生まれると言った方が正しい。
 自分と他人は持ちつ持たれつなのだが、ここで他人を自分勝手に定義してはまずい。自分のサジ加減で理解できるなら、
それは最早他人ではなく自分の想像物だ。他人は好意によっても悪意によっても捉えられないまま自分の手元から逃げて
いく。他人の代表格は神なのだという。神はこの世界を作ったけれど、何のために作ったのかわからない。神という他人
によって成り立っている自分がこの世界で生きていくには、自分の存在理由を根拠づけるために神を求めなければならな
いが神はすりぬけていく。「唯一なる神への道程には神なき宿駅がある」
 神が本当にわからないものなら、仮定することさえ出来ないんじゃないか。そこで神=この世界そのもの、とするとし
っくり来るのか。意図はわからないけれど、こうして存在する世界はある。そこからは逃げられない。
 7月21日(土)曇り
 終業式と共にテストの結果も返ってくる。赤点どころか平均点以下は二つだけ、数学はクラスで2番。高校に入ってか
ら一番良いテストだ。結果を誇らしく眺めていると、サエが後ろからのぞいてきて、やるじゃん、と言ってくれた。サエ
の成績と比べれば物の数にもならない。そう言うと、ハナから比べる対象にすらならないっての、と頭をはたかれた。
 どうにか補習をまぬかれたらしい新田もやってきて、夏休みどっかに行きてーよな、と誘ってくる。合宿もあるし、し
ばらくはバスケに集中しなければならないが、お盆ごろにはどうにかなりそうだ。
 7月22日(日)曇り時々雨
 夏休みに入ってようやく県ベスト8のR高との練習試合。川城と広松にボールを集めつつ、隙あらば外から狙っていく。
メンバーを入れ変えつつ3試合3連勝。広松は3試合すべてに出て計50ゴール、ハッパをかけた甲斐があった。やるじ
ゃん、と声をかけると、まだまだっす、とふてくされたように言うのでリュウタ君と共にからかう。おまけに高岡もアド
バイスと称した訓示をやり始め、広松は皆に笑われっぱなしだった。


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