990:あなたの声を祈りによって聴く可能性について8/10 ◆ihO9dxzf9I[sage saga]
2012/08/12(日) 23:43:33.67 ID:30xXBl/o0
7月23日(月)晴れ
休憩中にサエから、男子はどうよ、と声をかけられる。一年のことをあれこれと話していると、ちゃんと副部長やれて
んだ、と笑った。上手くやろうとしているのは事実だが、いざ言われてみるとなんだかむず痒い。川城の調子も訊いてき
たので、いつも通り淡々としてる、と答えたら、やっぱり? 良くも悪くも変わらないからこそかえって部長に向いてる
のかなあ、と川城の方を見やると、岡崎さんと何か喋っていた。そこにリュウタ君がやってきて、微笑ましいツーショッ
トですなあ、とからかってくる。サエはそちらも最近はどうですか? と小指を立てて受け流していた。
女子はレギュラーを占めていた三年がごっそりと辞めて土台作りの段階だ。誰でもレギュラーになれるから、練習はい
わずもがな普通に話すだけでもどこか気の置ける所があって言葉を選ぶにも気を使わざるを得ない。一度お互いの立場が
決まってしまえばやるべきことがはっきりするのだろうが、いちいち目配せをしないといけない状態は中々しんどいのだ
そうだ。まあ、その緊張感が常にあってこそ強くなれるんだろうけどね、と言ってサエはコートに戻っていった。
7月24日(火)晴れのち曇り
国体選抜に岡崎さんと川城が選ばれる。リュウタ君と俺も候補入りはしていたらしいが外れた。リュウタ君を先導に祝
福と腹いせを兼ねて練習後にペットボトルのシャワーをプレゼントする。納涼も出来て至れり尽くせり。
7月25日(水)曇り一時雨
今日からサッカーだけ先取りする形でオリンピックが始まる。なでしこはともかく男子は大丈夫だろうか。バスケを見
るつもりはあまりない。どうせアメリカが勝つに決まっている。アメリカ人は簡単そうにプレイするからつまらない。そ
んなことをリュウタ君と話していると岡崎さんも同意してきた。殊勝にも参考にすべきところはある、なんて言うと思っ
ていたが、難しそうにプレイしてる所こそ興奮できるし、参考にするにも熱狂出来ないとダメだしな、と岡崎さんは言った。
7月26日(木)曇り時々晴れ
なでしこは順当に勝利。練習終わりに幡野と会ったので『レヴィナス』について話す機会が出来た。色々と話したのだ
けど、幡野が唐突に変えた話題のほうが頭に残っている。
キリスト教の復活って知っているか? ハリツケにされ死んだイエスが弟子達の前に現れたっていう話だ、これを実際
にイエスの肉体が目の前に現れた、なんて解釈するとファンタジーにしかならないし、科学的に生きている私達が関わる
必要はないんだが、復活という現象自体はありうると思うんだ、弟子達はイエスを裏切った後に復活に立ちあった、この
間彼らはイエスに対して罪の意識を背負っていたと考えるのが妥当だろう、その意識が現実に生きている中で何らかのき
っかけで喚起される、例えばまたもや誰かを裏切ってしまったとかね、そこで弟子達は頭の中にイエスを召喚するんだ、
今度こそ裏切らないために、自らを律するために、あの時果たせなかった誓いをやり直すために、復活とはこういう具合
に倫理を打ち立てる決定的瞬間として訪れると解釈したほうがいい、つまり肉体が復活するんではなくて死者の生前の在
り様が蘇ってくるわけだね、ドストエフスキーという作家は復活の問題を本気で考えていたよ。読む本がまた増えた。
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