過去ログ - 妹の手を握るまで(その2)
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12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/29(日) 21:50:46.56 ID:EQn04HIIo
学園祭の翌々日、あたしは授業中もずっとお兄ちゃんの言葉を繰り返し思い出していた。


「おまえのこと、実の妹じゃなくて一人の女としか見られねえ」

「俺、おまえのこと好きだ、愛してる。おまえを俺のものにしたい」

「お、俺の彼女になってくれ」


もう勘違いのしようもなかった。お兄ちゃんは本心からあたしを求めてくれているのだ。
それはあたしのように長く密かに想い暖めていた恋情ではないだろうけど、とにかくお兄ちゃんもあたしと同じように実の兄妹であるにもかかわらず、あたしを求めているのだ。

昨日お兄ちゃんに真剣な目で告白された時、あたしはお兄ちゃんの胸に飛び込みたかった。でもそれはまだできなかった。あたしの彼氏は先輩なのだから。
あたしは酷いことをしようとしている。最近時折先輩が委員長ちゃんを見つめる目が気にはなっていたけど、それでも先輩があたしのことを好きなのは確かだった。
あたしはお兄ちゃんを忘れようとして先輩と付き合い出した。あたしはそれなりに先輩のことが好きだったし、このまま時が過ぎればもっと先輩のことが好きになり先輩との距離も縮まっていたかもしれない。
でもお兄ちゃんがあたしのことを求めていることを知った時から先輩への想いは急速に薄れてしまった。

あたしは酷いことをしようとしていた。少し待ってとあたしはお兄ちゃんに答えた。あたしはお兄ちゃんが待ってくれているうちに決着をつけなければならなかった。
先輩はいつも最後にはあたしの思うとおりにさせてくれた。きっとあたしが別れてとお願いすれば大騒ぎの末にあたしのことを思いやって別れてくれるだろう。たとえ自分がぼろぼろに傷付いたとしても。
それでもあたしは先輩に別れを告げるつもりだった。どんなに悪い女となってしまうにしても。


先輩をメールで呼び出そう。あたしはどこか静かなところでメールするつもりで席を立った。
その時、妹友ちゃんがあたしの方を見つめているのに気がついた。あたしと目が合った妹友ちゃんは席を立った。あたしは思わず妹友ちゃんから目を逸らした。

「妹ちゃん、ちょっといい?」
近づいてきた妹友ちゃんが声をかけた。あたしは妹友ちゃんの顔を見られなかった。先輩に続いて再びあたしは妹友ちゃんの恋を邪魔することになるのだから。
あたしの中では罪悪感とお兄ちゃんが選んだのはあたしだという密かな優越感がせめぎあっていた。

「ごめん、ちょっと用があるから」
あたしは妹友ちゃんから目を逸らして呟くように話した。

「あ、そうなんだ。うん。ちょっと話があったんだけど後でいいや」

「・・・・・・話って?」
話? お兄ちゃんについての相談だろうか。

「うん。ちょっとお兄さんのことでお話があるの」
あたしは席を立った。お兄ちゃんの話なんか今できるはずがなかった。

「ごめん、用事があるから行くね」
あたしは逃げるようにして教室から出た。


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