過去ログ - 妹の手を握るまで(その2)
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/29(日) 21:54:56.38 ID:EQn04HIIo
あたしが先輩に会いたいとメールすると先輩はお昼に学食で待ってると返事してきた。
昼休みが近づいてきた。あたしはこれから言わなければいけないことを考えると気が重かった。でもあそこまではっきりあたしに告白してくれたお兄ちゃんを待たせてしまったことを考えるとどんなに気が重くてもすべきことはしなくてはならなかった。
きっと友だちをなくすだろうな、あたしは思った。でもお兄ちゃんと結ばれることを考えればこの先学校でひとりぼっちになっても我慢できる。

午前中の授業が終わるとあたしはすぐに教室を出て学食に向かった。学食の入り口まで来たところで後ろから走ってきたらしい妹友ちゃんに呼び止められた。

「妹ちゃん、ちょっといい?」
妹ちゃんにあたしの正面に回りこみ立ちはだかるようにして言った。

「ごめん、妹友ちゃん。今日は先輩とお昼の約束してて」
正直あたしは今妹友ちゃんと話すのは辛かった。妹友ちゃんに辛い想いをさせるだろうという罪悪感もあったし、これから先輩に話さなければいけないことに集中したいという気持ちもあり、自然にあたしの言葉はは弱々しく歯切れの悪いものとなった。

「そんなに時間はかかんないって。5分、いいえ2分でもいいの」
それでも妹友ちゃんは微笑を浮かべながら続けた。

「どうしたの? 妹友ちゃん」
あたしは諦めて妹友ちゃんの話を聞くことにした。

「うん。あたしね、一番先に妹ちゃんに報告したくて」
え? 正直今まで全く気にしていなかったある考えが頭に浮かんだ。そして悪いことにそれは事実だった。

「あたしね、一昨日学祭でお兄さんに好きって告白したの」

「そうなの」
あたしの心はざわめいた。

「で、お兄ちゃんは何て言ったの?」
あたしはようやく妹友ちゃんの顔を見た。

「うん、お兄さんとお付き合いすることになったの。あたし、絶対振られると思ってたからびっくりしちゃって」

一瞬衝撃で何も考えられなかったあたしの中で、その恐ろしい時系列がゆっくりと姿を現してきた。


学祭で妹友ちゃんに告白され妹友ちゃんの想いに答えたお兄ちゃん。
お兄ちゃんは妹友ちゃんと付き合い出したその夜、あたしと一緒のベッドで一夜を過ごした。
その翌日、お兄ちゃんはあたしが欲しいとあたしに真剣に告白してくれた。


その全ては妹友ちゃんの「彼氏」になった後の出来事だったのだ。


あたしは必死に自分の心を抑えて、妹友ちゃんの手を握った。

「お兄ちゃんの彼女が妹友ちゃんでよかった」
あたしは震えずしっかりと声が出せているだろうか。あたしの手は見苦しく震えていないだろうか。

「お兄ちゃんのことよろしくね」
そして妹友ちゃんの目を見つめたあたしの瞳には涙が浮かんではいないだろうか。

その時、学食の方から待たされていらいらしている先輩があたしを見つけて呼びかえる声が聞こえてきた。それはあたしにとって救いの声だった。あたしはじゃあねと言って妹友ちゃんに手をひらひら振って学食で待つ先輩の方に駆けて行った。


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