786:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/02(水) 23:30:50.63 ID:ubUBDJEVo
僕は、高校に入学するとまず生徒会に入った。新入生なので、もちろん選挙の必要がない平役員からのスタートだった。同時に、これまでの雑学的な趣味の対象の一つだったパソコン関係の部にも入部した。
クラスではもう傾聴やコンサルタンティング関係のスキルを発揮させなかったから、僕は目立たない生徒の一人だった。それでも成績が良かったことと一年生ながら生徒会のメンバーになったことで、ある種の秀才生徒的な位置は確保できていた。僕は生徒会活動と部活に打ち込んだ。生徒会では庶務から初めて会計や書記を経験したけど、どの仕事にも能力の全てを注ぎ込んだせいで、先輩たちの受けはとてもよかった。一年生の半ばで、僕はもう次期生徒会長と目されるようにまでなっていた。
平行していたパソコン部の方は、廃部寸前の過疎部だった。もともとは、学校側の肝入りでIT教育の一環として設立されたらしいのだけど、当時のパソコン部は学校側の期待を裏切りネトゲ廃人の巣窟と化していた。部室には高スペックなPCが溢れていたけれど、そのPCで行なわれていたのはネトゲのプレイはもとより、萌え絵の制作や初歩的なゲームのプログラミング、そして極めつけは単なる2ちゃんねるなどのネット閲覧だったのだ。
僕はその両方を楽しむことができた。退廃的なパソ部の先輩たちも健全な高校生には不要なはずのITスキルだけにはやたら詳しかったから、僕はずいぶんとここでネット事情の勉強ができたのだった。そして、生徒会に続いてここでも僕は来年の部長候補に祭り上げられた。そもそも部長なんてやりたがる部員は皆無に等しかった部だという事情もあったけど。
こうして僕の一年生の生活は過ぎて行った。もともと僕は、高校一年生の生活なんかに期待していなかった。それは次年度に下級生として同じ高校に入学してくる女を待つだけの退屈な時間に過ぎないはずだったのだ。でも、もういくら待っても女が僕の後を追って入学してくる可能性はないのだ。
当時の僕は抜け殻のように定められた日課を機械的に消化していた。もちろん、こんな僕に話しかけてくれる友だちもいなければ、以前のように言い寄ってくる女の子もいなかった。
なぜ、僕はあの時気がつかなかったのだろう。あの時の恋も陽性転移の一種である可能性を。女の僕への好意だけが特別だなんて理由は何もなかったのに。そして、逆転移という言葉がある。これは、コンサルタントがクライアントに親しく接して過ぎた結果、クライアントに対して過度に感情移入してしまう現象のことを言う。僕の女への恋もそれかもしれなかった。どうしてあの時僕はあんなに自信満々だったのだろう。
生徒会で活発で前向きに活動していてもパソ部で退廃的な活動をしていても、その考えは僕の脳裏を占め一向に去っていってくれなかった。
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