813:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/05(土) 22:57:44.12 ID:wMLLgnF4o
僕の幼馴染さんへの告白は失敗に終った。表面的な意味では、彼女は好きな男がいるからといって僕を拒否したので、客観的に見れば僕の告白は空振りだった。そして実質的な意味で言っても、告白することによって明らかになると思っていた女と兄君、幼馴染さんと兄友君の関係は相変わらず曖昧なままだった。
幼馴染さんは僕が兄友君の名前を出した時少し戸惑っているようだったから、ひょっとしたら幼馴染さんと兄君が付き合っている、あるいは幼馴染さんが兄友君ではなくて兄君のことが好きなのではないかという推測は成り立った。でも、それは証拠のない単なる推論に過ぎなかった。結局のところ僕は、副会長から聞かされた曖昧な噂話以上の情報を入手することができなかったのだ。
女が同じ高校に入学していたことは、それからまもなく確認することが出来た。ある朝、僕は早めに登校して一年生の校舎の入り口を遅刻ぎりぎりまで見張ったのだ。
814:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/05(土) 22:59:11.38 ID:wMLLgnF4o
やはり同姓同名の他人ではなかったのだ。僕は胸を痛めた。彼女にとっては僕なんて過去の思い出に過ぎないのだろう。だから、同じ学校に入学してもそのことを僕に知らせる気にすらならなかったのだ。それは僕にとっては厳しい発見だった。ある意味、女が黙って転校したことより厳しかった。
あの時は、僕たちは家庭の事情というやつに振り回された悲劇のカップルだと思い込むことが出来た。彼女が黙って転校して行ったのも、僕に話したとしてもどうにもならなかったのだからだと。
でも、こうして同じ学校に入学したことを、女が僕に話そうという発想がない時点で、僕と女に起こった出来事は僕が思い込んでいるようなロマンティックな悲劇などではなく、単に女が僕のことなんか気にしていなかったということになる。それも、おそらく彼女が転校した時から。いや、もしかしたら僕と付き合っていたときから。
815:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/05(土) 23:02:03.05 ID:wMLLgnF4o
僕の告白に応えなかった幼馴染さんだけど、その後の生徒会活動には普通に顔を出してくれていた。学園祭が近かったので、今では主戦力となっている彼女が僕のことを気にして生徒会や実行委員会に顔を出しづらくなったらどうしようと思ったのだけど、責任感が強いせいか彼女は普通に活動に参加してくれていた。
ただ、僕が堪えたのは幼馴染さんがやたらに僕のことを気にするような行動を取るようになったことだった。僕を振ったことを気にしていたのだろうか。彼女は告白を機に僕とよそよそしくなるより、今まで以上に僕に親しく話しかけることによって、僕の告白は気にしてませんよ、今までどおりいい先輩後輩でいましょうと訴えているようだった。
でも、そんな彼女の行動はかえって生徒会役員たちの好奇心を刺激してしまった。
816:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/05(土) 23:05:31.64 ID:wMLLgnF4o
そのうち、どういうわけか僕が幼馴染さんに告白して、幼馴染さんがそれを断ったという噂が生徒会内に流れ始めた。それは噂ではなく事実だったのだけど、僕は本気で幼馴染さんが好きになったわけではない。でもその噂はその部分は抜きで、本気で僕が彼女を好きになり告白して、そして幼馴染さんに振られたということになっていた。僕は噂をやはり副会長から聞かされたのだった。
「幼馴染さんがあんたのことを好きなんじゃなくて、逆だったか」
副会長は遠慮会釈なく僕に言った。「幼馴染さんって、あんたのことが好きだから最近あんたに接近してるんじゃなくて、振ったことが後ろめたくてあんたにも気を遣って欲しくなくて、今まで以上にあんたと接するようにしてたのね」
817:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/05(土) 23:09:09.76 ID:wMLLgnF4o
生徒会に居辛くなった僕は、会長としての最低限の仕事を済ますと、僕が部長を務めているパソコン部で時間を過ごすようになった。ここは気楽な場所だった。僕は部長だったけど、ここの部員を組織として動かすとかみんなで一丸となって何かをやり遂げようなんて無駄なことを考えたことは一度もなかった。
この部は極度な個人主義的な雰囲気が特徴であり、部員たちはデスクトップPCの前で思い思いに勝手なことをして放課後の時間を過ごしていた。まるでネカフェのようだったけど、それがパソ部の部活の実態だったのだ。一応僕はこの部の部長なのだけど、ここに逃げ込むとそういうことは別にどうでもいいやと感じられるような雰囲気の場所なのだった。
ある日、生徒会のミーティングで戸惑っているような幼馴染さんや、からかい混じりの役員たちに最低限の指示を与えた後、僕は逃げるようにパソ部の部室に来た。いつもは静かにPCの前で好き勝手なことをしている部員たちが、どういうわけか困惑したように一人の女の子を囲んで何やら話し合っている姿が僕の目に入った。
818:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/05(土) 23:11:28.35 ID:wMLLgnF4o
「はい。いろいろネットのこととか勉強したくて」
その一年生の女の子はきれいな顔を上げて僕の方を見て言った。意外としっかりとした口調だった。
「そうか。入部はいつでも歓迎するけど・・・・・・でも、うちって女の子は一人もいないんだけどそれでも平気なの」
僕はまず気になっていることを確認した。
819:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]
2012/05/05(土) 23:12:04.29 ID:wMLLgnF4o
今日は以上です
明日また投下予定です
820:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/05/05(土) 23:16:31.66 ID:B/BpPzLIO
乙乙
会長も会長だよなあ
こりゃ男と女が心底かわいそう
821:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)[sage]
2012/05/05(土) 23:18:23.64 ID:tmWUxnRX0
乙!
会長ちょっと黒いな
822:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県)[sage]
2012/05/06(日) 00:58:11.69 ID:2JGVGOZ8o
おつ
男と幼馴染
823:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2012/05/06(日) 01:05:26.56 ID:HUn4FHxao
乙
1002Res/882.22 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。