過去ログ - 女神
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944:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/18(金) 23:33:58.77 ID:yfasADApo
 その時、僕の腕に抱きついていた妹はそのままの姿勢で副会長に言った。

「副会長先輩って、もしかして会長のことが好きなんですか」

 妹のその言葉にその場が一瞬で凍りついた。

「あ、あんた、何言って」

 僕は副会長がここまで狼狽した姿を見るのは初めてだったかもしれない。彼女の表情は蒼白になり、そしてすぐに紅潮した表情でになった。

 僕は、この時初めて僕の腕にくっついている妹を見た。まだこの間まで中学生だった幼い外見を残した彼女は、一年生にとっては自分よりはるかに大人に思えるだろう副会長を前にして、少しも臆した様子がなかった。そして、妹は僕の方など振り向きもせず真っ直ぐに三年生の副会長を見つめていた。

「あたしに嫉妬してるんですか? だったらお姉ちゃんのことを心配してるような振りをするのはやめて、先輩に『あたしとこの子とどっちか好きなの?』ってはっきり聞けばいいんじゃないですか」

 副会長も今や紅潮した顔のままで妹を睨んでいた。僕はいたたまれない気持ちを持て余して、結局黙って下を向いてなるべく早くこの修羅場が終ることだけを心の中で祈っていた。それに校門の前に近いこともあり、みっともない三人の男女の様子はすでに相当の生徒たちの視線を集めているようだった。

「あと、副会長先輩は勘違いしてますよ」
 妹は平然と続けた。「先輩はお姉ちゃんに振られたからあたしに乗り換えたわけじゃないですよ」

 いったいこの子は何を言おうとしているのだろう。そして何が目的で僕をかばっているのだろう。僕は混乱していた。

「先輩があたしのことを好きだとしても、それはお姉ちゃんとは関係ない先輩の純粋な気持ちでしょ。そのことを非難する資格が副会長先輩にあるんですか」

「・・・・・・あんたさあ。調子に乗ってるんじゃないわよ、ブラコンの癖に」
 追い詰められた副会長はついにそれを口にした。でも、苦し紛れの反撃は相応に効果があったようで、妹はそれを聞いてこれまでの元気を失ったようにうつむいてしまった。

「・・・・・・それこそ、君には関係ないよな」
 僕は思わず妹をかばって口走った。「僕のことを責めるのはいいけど、それは妹のプライバシーの侵害だろ? ブラコンとかって全然今までの話と関係ないじゃないか」

 その時、僕は自分の腕に抱きついていた妹の手が更に力を込めて僕にしがみつくようにしたのを感じた。視線を妹のほうに逸らすと、今まで気丈に振る舞っていた妹が僕の方を潤んだ目で見つめていることに気がついた。


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