108:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:41:09.54 ID:vAi26PND0
あの……臭い花は。
ため息をついて、六畳ほどの狭い部屋……その隅の戸棚に無造作に突っ込んだ造花に目をやる。カランは十七になっても、電灯を薄く点けておかないと寝ることが出来ない。ここ、地下の里には当然ながら窓というものはない。明かりを得ることが出来るのは天井からのみだ。
おびただしい数の本が、部屋の周囲に敷き詰められた本棚に突っ込まれていた。年頃の娘の部屋とは思えないほど、本に溢れてぐちゃぐちゃになっている。収まりきらないものは床に積み重ねられていた。
枕元には、妹が最後まで『捨てろ』と騒いでいたあの白い花があった。それを指先でつまんで、くるくると回してみる。
何処となくレモンの香りがした。
――この花は、いい匂いがするのだ。
柑橘系の芯のしっかりとした、それでいて優しく温かい香りがする。
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