534:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:27:47.05 ID:PLPcklEN0
室温は一定に保たれているようで、温かい。
ガゼルは、とりあえず進入した痕跡を消そうと無理やり思考を切り替え、後部からピノ粒子を四散させた。
それが、壁に開けた穴を塞いで、元通りに戻す。
535:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:28:14.60 ID:PLPcklEN0
ガゼルはそれに、ヒステリックめいた、素っ頓狂な声を返した。
あまりに引きつったため、声にノイズが混じる。
『どうイウこと? 人間牧場? 人間ガこんなコトをするってイウの?』
536:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:28:45.00 ID:PLPcklEN0
『魔法使いが……魔法使いガこんなことを?』
『誰かは分からないけど。人間の発想じゃないわね』
虹はクックと笑ってから、壁にもたれかかった。
537:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:29:21.78 ID:PLPcklEN0
しばらく沈黙してから、ガゼルはカメラアイを虹に向けた。
『……ごめん、取り乱した』
『あなたに取り乱されちゃ、たまったもんじゃないわよ。そういうことはこれっきりにして』
538:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:29:58.79 ID:PLPcklEN0
『…………』
追従しながら、ガゼルは言葉に詰まった。
虹の人格はよく把握していたはずだが、ここまで割り切っていた子だとは、思ってもいなかった。
539:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:30:33.57 ID:PLPcklEN0
虹がボタンを操作すると、ガコン、と音がしてエレベーターが動き出した。
しばらく降り進む。
何段かの層になっているらしく、パイプ状のエレベーター通路の外は見えなくなっていた。
540:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:31:06.24 ID:PLPcklEN0
『階下に生体反応。どうする?』
『殺す』
端的にそう言うと、虹はコートのフードを被り、ニマァ、と口を広げた。
541:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:31:56.95 ID:PLPcklEN0
『あまり無駄な犠牲を出さないように』
『無駄な犠牲なんてこの世にないわ』
ガゼルに呟くように言い返し、虹はガコン、とエレベーターが止まり、扉が開くと同時に、走り出した。
542:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:32:28.93 ID:PLPcklEN0
病み上がりとは思えない運動神経で、一筋の光のように虹が通り過ぎる。
それらが崩れ落ちるより先に、虹は顔面に浴びた返り血を舌で舐め取り、瞳をギラつかせながら走り続けた。
『ここの通路情報をハックした。さっきの人間牧場から採取した胎児を、加工するエリアみたいだ。無駄な殺戮はやめよう。もっと下るよ。エレベーターエリアは左だ』
543:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:33:35.70 ID:PLPcklEN0
『何だ……? 量子波がマイクロコンマゼロ八秒で、異常値を感知! 魔法だ!』
『遅い!』
虹が脳内通信で怒鳴る。
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