過去ログ - ほむら「この話に最初からハッピーエンドなんて、ない」
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36:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします[saga]
2012/02/29(水) 20:53:54.53 ID:fRW4icTG0
過去十数回に亘る繰り返しの中、一度だけ現れたイレギュラー。それが織莉子だ。
なればこそ、低確率で発生する単なる偶然だったのだと、ほむらも諦めがついた。

而して織莉子は、再びほむらの前に姿を現した。
ほむらにとっては、織莉子の存在そのものが不吉の象徴だ。
今回の織莉子に魔法の力は無いが、放置するべきではなかったか、とほむらは己の浅慮を悔いる。

ほむらに対し、あの織莉子は何かを必死に訴えていた。
私を知っているのか、私を憎んでいるのか、と。
ほむらの側にしてみれば、今更確認するまでもなく憎いに決まっている。
が、あれはそういう類の問いではない筈だ。
憔悴しきった織莉子の顔を思い出すにつれ、ほむらが危惧していた事態が起こったのだと、考えざるを得なくなった。
ならば、織莉子の問いは「汚職議員の娘である私が嫌いか」という意味合いだろう。
数々の平行世界に於ける可能性を知る、ほむら個人の事情など、今の織莉子に知る由もない。
キュゥべえが織莉子に教えた……という線も一瞬疑ったが、この時間内では、まだほむらと接触すらしていない。

(……考えすぎね。それにしても)

意外だった、とほむらは独りごちた。
そしてすぐに、いえ、そうでもないわね、と訂正する。

一目見れば、十人中十人がそうと答えるほど、あの織莉子は憐れを誘う沈痛な面持ちをしていた。
今になって思い返せば思い返すほど、魔法少女の織莉子とは何もかもが違う、そんな雰囲気を身に纏っていた。
しかし、それは冷静に考えれば何もおかしなことではないのだ。

巴マミ。
ほむらに戦い方を教えてくれた、面倒見がよく、優しい魔法少女の先輩。
……ほむらに銃口を向けてきた時の、悲痛に歪んだ表情。

美樹さやか。
人懐こく友達想いの、明るい笑顔が特徴のクラスメート。
……戦いに身を投じると脆い心の均衡が崩れ、世界に呪いを撒き散らしてしまう少女。

佐倉杏子。
隣町を縄張りにする、身勝手で他者の迷惑を省みない利己主義者。
……本心では人の為に生きたいと願い、根本的な悪人にはなれずにいる魔法少女。

人には幾つもの顔があり、普段見せている部分だけが、その人物の本質とは限らない。
一箇月のループで、ほむらが学んだ教訓の一つである。
ほむらにはこれまで知る機会がなかっただけで、あの織莉子もまた、彼女が持つ側面の一つなのだろう。
そう、結論付ける。そしてほむらの推測は、正しくその通りだった。

思考に一区切りがついたところで、ほむらは大きく息を吐き、それから濃紺の空を仰ぐ。
今日はもう引き揚げよう。上手くいかない時は、何をやっても上手くいかないものだ。
事態が好転するまで、堪えて待つしかない。私は本当に手際が悪いな、とほむらは沈み込む。

……ほむらは、まだ気付いていない。
何故、織莉子が追ってきたあの時に、完全に向き直り話に耳を傾けなかったのか。
会話を打ち切ったところで魔女の発見が困難なのは、予め分かっていたことなのだ。

単純に換算出来る様な時間などではなく、ほむらの心の深奥にこそ最大の課題があるのだと、
彼女自身が気付かない限り、永遠の迷路の出口は決して姿を現さない。


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